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社会とのズレに気付けるか? 価値観をアップデートする“リサーチ”の考え方
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社会とのズレに気付けるか? 価値観をアップデートする“リサーチ”の考え方

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連載「広報の現場から」
PR会社にいると「広報部を立ち上げたい」「広報人材を育ててほしい」という相談をいただくことがあります。外部のPR企業と契約するまでではないものの、広報部門の必要性を感じて社内で人材を育てたいと考える企業も少なくありません。それでは、どういう人が広報に向いているのでしょうか。本連載では、広報を必要とする企業や、これから広報の仕事をしてみたい人に向けて、広報現場で求められるスキルをStory Design houseの森が探っていきます。これまでの連載記事はこちらからお読みいただけます。

森 祥子(もり・さちこ)
Story Design house株式会社 Senior PR Consultant。ベンチャー企業から大企業まで、新たな事業開発に取り組む会社の成長戦略をコミュニケーションから描く。1000人クラスの大規模イベントや、演出にこだわったプレスイベントも得意。

連載第3回では、PRパーソンに求められる「切り口」について考えました。そこでは、よい広報の切り口をつくるためには、人々の価値観や環境の変化をとらえることが大切だと書いています。今回はその話題をもう少し掘り下げて、「どのように価値観の変化に気づくか」、そして「どのように自らの価値観をアップデートしていくか」を考えてみたいと思います。

価値観のアップデートはよい広報の必須条件

「ターゲットに刺さる広報」を考えるために、広報担当は情報をたくさんインプットすることになります。

しかし、自分の感覚や考えだけにもとづいてインプットを続けても、なかなかよい広報活動はできません。ターゲットにしっかりと情報を届けるためには、ターゲットの視点に立ち、ターゲットの感覚や考え方を想像することが不可欠です

そのため、広報担当はあるときは女性の、あるときは男性の視点に立つ必要があります。B2Bの商材を扱う場合は、企業の意思決定層の視点に立つことになるでしょう。

中でも難しいのは、自分が体験したことのない立場の人をターゲットとするときです。例えば、若くて子供のいない広報担当にとって、子育てする親の気持ちや高齢者の気持ちを理解するのは簡単ではありません。

さらに、自分自身が体験してきた立場の人をターゲットにする場合も、油断は禁物です。かつての高校生や大学生と現代の高校生や大学生は、かなり異なる感覚・考え方を持っています。このように考えると、もともと自分のもっている価値観をそのまま展開できる広報活動は多くはありません

そこで広報担当に問われるのは、自らの思い込みを捨てること。つまり、いかに柔軟に自分の価値観をアップデートしていけるかが求められているのです。

人々の考え方は常に変わり続けています。広報を担う人は、自分の考え方が社会とズレていないか、ターゲットの価値観にきちんとついていけているか、いつもチェックしておく必要があります。

どうやって自分をアップデートするか

さて、広報担当とターゲットの間で起こる価値観のズレのなかで、代表的なものは世代間ギャップでしょう。

私自身、世代間ギャップには苦労した経験があります。以前、10代の人をターゲットとするイベントを開催したとき、会場入口に「Facebookページにいいねしてください」と掲示をしたところ、若いスタッフに「Instagramのほうがいいと思います」と言われてハッとしたこともありました。

このようなターゲットとのギャップを埋めるために最も効果的なのは、ターゲット層に実際にアプローチして、どういった考えを持っているのか、どういう行動を取っているか話を聞くことです。

例えば、最近の若い人は食事の場所を食べログで調べないし、人とやりとりするときにFacebookやLINEも使わず、Instagramでメッセージを送り合うと聞いたことがあります。これは本当なのでしょうか。本当だとしたら、なぜそうした行動を取るのでしょうか。10代向けの施策を打つのであれば、こういったメディアやアプリの接触状況を聞いてみるといいでしょう。

もちろん、直接ターゲットに話を聞くことが難しいこともよくあります。そのようなときは、異業種でも構わないので、他社のブランディング事例を見てみましょう。ちなみに、先ほど書いた施策を打った際には、ネスレ日本株式会社がYouTubeで展開している「#キットずっと プロジェクト」をチェックしていました。若年層一般への訴求例として参考になると思います。

炎上事例も、アップデートのきっかけになる

近年では、企業の発信したコンテンツがSNS等で問題視され、「炎上」することも増えています。昨年春、テレビ朝日のニュース番組「報道ステーション」のPR動画がジェンダーの観点から問題視された際にも、広報担当として意識をアップデートしていくことの重要性を改めて認識させられました。

ジェンダー関連のトピックは、近年大きく価値観が変わってきています。こうした炎上をきっかけに、自分と社会とのズレに気づくことができるでしょう。PR担当者にとって、炎上事例は貴重な学びとアップデートの機会になります

炎上事例を見るときには、「どのように、なぜ」それが炎上したのかを理解することが大切です。問題視されるに至った経緯や企業側の対応、消費者の感情や理屈をその都度知ることで、問題の根幹を学び、自分の意識を改めることができます。

また広報担当としては、「どういう規模感で」炎上したかまで知っておくとよいでしょう。もともとその企業のターゲットだった消費者コミュニティの内部で問題視されたのか、それを超えて一般層まで含めて問題視されたのかを理解することで、世の中の価値観の変化度合いをより詳しく把握できます。

クライアントやチームのアップデートもサポート

以前、働き方改革に関するインタビューで、「うちの会社は積極的に改革を行っている。男性の育休も100%を目指している。女性が子供を産んでからも働ける環境を作っている」と答えた経営者がいました。

育休をきちんと取得できる環境をつくるのは大切ですが、話の流れによっては不適当な発言かもしれません。たとえば、「女性は子供を産むべし」という価値観が前提にある発言だと受け取られてしまっては問題になります。

こういう場面が予想される場合、広報担当として「最近はこういう考え方もありますよ」「真意が伝わるように表現を工夫しましょう」と一言伝えることも大切です。もちろん、広報担当自身のものさしが今の時代と合っている必要があります。

また、取材を受ける方の感覚そのものが世の中とズレている場合、広報の専門家としてレクチャーを行う必要があります。そのようなケースでは、広報らしい「第三者」の視点を活かし、他社事例も引用しながらレクチャーすることで、新しい考え方を受け入れていただくこともしばしばあります。

取材を受けるときの言葉遣いも大切です。ある取材の際に、「下請け」から「パートナー」に、「女の子」から「女性」に表現を変えていただいたことがありました。表面的な対処のように思われるかもしれませんが、言葉遣いを変えることで意識が変わることも珍しくありません。

取材する側、される側のギャップを解消

表現の工夫に関連して言えば、「取材する側に伝わる表現」を追求することも大切です。記者の方に真意が伝わらなければ、当然その先のターゲットにも伝わらないからです。

技術革新のスピードが増している現代、取材する記者さんよりも、取材を受ける企業側のほうが豊富な専門知識を持っていることは珍しくありません。そのような状況で、社内と同じ言葉遣いで取材を受けてしまうと、伝えたいことがうまく伝わらない可能性があります

特にIT業界では専門用語が頻発しますが、それを取材で用いるときには、記者さんが用語を理解しているかどうか確認しないといけません。「インプレッション」を「表示回数」と言い換えるなど、よりわかりやすい表現を用いることも必要になるでしょう。

また、変化がめまぐるしい分野でトレンド感を伝えるためには、その分野内でのつながりを説明することも効果的です。「前はこうだったけれど、次のトレンドはこうです」「このサービスは、現在普及しているこのソリューションの次に来るものです」などと表現することで、革新性が多くの人に伝わりやすくなります。

まずはみんなで話すことから

今回は、より効果的な広報活動のために、ターゲットに合わせて価値観をアップデートしていくことの重要性をお伝えしました。アップデートの方法もいろいろとご紹介しましたが、限りある時間のなかで一度に実行するのはなかなか難しいでしょう。

そこでまずは、身の回りにいる「情報感度の高い人」を経由して、現代の価値観に触れるところから始めてみるのはいかがでしょうか。TwitterやFacebookなどのSNSをチェックすると、新しい考え方を知ることができます。

そして、そうやって手に入れた情報をもとに、朝礼や定例ミーティングの機会を活用して、みんなで話す機会を作ってみてください。チーム内でちょっとした「意識合わせ」をする取り組みを続けるだけでも、アップデートが進むはずです。

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