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喜ぶのはまだ早い、広報担当が取材でやるべき4つの準備

連載「広報の現場から」
PR会社にいると「広報部を立ち上げたい」「広報人材を育ててほしい」という相談をいただくことがあります。外部のPR企業と契約するまでではないものの、広報部門の必要性を感じて社内で人材を育てたいと考える企業も少なくありません。それでは、どういう人が広報に向いているのでしょうか。本連載では、広報を必要とする企業や、これから広報の仕事をしてみたい人に向けて、広報現場で求められるスキルをStory Design houseの森が探っていきます。これまでの連載記事はこちらからお読みいただけます。

森 祥子(もり・さちこ)
Story Design house株式会社 Senior PR Consultant。ベンチャー企業から大企業まで、新たな事業開発に取り組む会社の成長戦略をコミュニケーションから描く。1000人クラスの大規模イベントや、演出にこだわったプレスイベントも得意。

「取材を受けて、できあがった記事を見てみると、一番伝えたかったことがきちんと書かれていなかった」「取材中に情報が正しく伝わっておらず、事実と異なることを書かれてしまった」、広報のお手伝いをする中で、こういったお悩みを聞くことがよくあります。

方向性が少し異なったとしても、記事にしてもらえたらまだ良いほうで、中には「取材を受けたのにメディアに掲載されなかった」というケースもあります。

このように、取材が必ず良い結果に結びつくと言い切れないのがPRの難しさです。広報担当者は、その難しさをどうやって乗り越えるべきでしょうか。今回は、私が考える4つの対処法をお伝えしようと思います。

結果の良し悪しは準備次第

取材を受ける側の意図が記事に反映されない場合、その要因は基本的に「取材前の準備不足」にあります。

よくあるのは、広報担当者がインタビューを受ける人に対して「これは何の取材か」をしっかりと説明できていなかったケースです。記者の方に話をする本人がメディアの特徴や取材の意図をきちんと理解できていなければ、すれ違いが起こる可能性が高まります。

ときには、記者の理解力や編集の手腕を疑いたくなることもあるかもしれません。しかし、すべてのメディアが自社に好意的とは限らず、すべての記者が事業内容を深く研究してきてくれるとも限りません。したがって、メディア側に原因を求めるより、まずは自社で工夫できることに取り組んでみるのが生産的です。

取材する側・される側のすれ違いをなくし、より良い取材記事に仕上げてもらうために、広報担当者にできることはいくつもあります。ここでは、私が特に大切にしている4つの取り組みをご紹介します。

①記事の完成イメージを考える

まず、これから受ける取材がどのような記事に仕上がってほしいか、理想的な記事の完成イメージを考えてみましょう。

特に重要なのは、新聞なら見出し、Webメディアなら記事タイトルなど、読者に強い印象を与える部分をイメージすることです。一番伝えたいのはどのようなメッセージなのか、最終的にどのような印象を残せば良いのかを考えます。

中には、取材で話した内容のほんの一部しか表に出ないこともあります。1時間の取材のうち数秒のコメントがテレビ放映されるだけ、数行のコメントが雑誌に掲載されるだけ、というケースです。そのため、「掲載時に何を切り取ってほしいのか」を具体的にイメージすることも大切です。

いずれにせよ、「こちらが話しやすいように話して、編集は編集のプロに任せよう」という受け身の姿勢では、なかなか思ったような結果が出ません。「私たちはこれが伝えたい!」という明確なイメージを持ち、攻めの気持ちで準備を進めていきましょう。

②想定質問とその回答を準備

「Q&A」の準備も必須です。記者の方から共有されている想定質問への回答はもちろん、そこからさらに話が膨らんだ場合に想定される質問とその回答を、広報担当者が用意します。

このとき「何を答えるか」ばかりを考えてしまいがちですが、まずは「何が答えられないか」を明確にしておくことが重要です。会社として回答不可な内容、数字を整理しておきましょう。

想定される質問に対して回答できる内容が薄い場合、内容をさらに深堀りする形で、具体的なエピソードやおもしろい事例について話せるような準備もしておくとよいでしょう。

③取材を受ける人へのレクチャー

取材が始まってしまうと、インタビューを受ける人が主役になり、広報担当者にできることはほとんどありません。だからこそ、取材対象者への事前レクチャーが非常に大切です。

準備①で考えた「一番伝えたいこと」を共有し、どのように話せばそのメッセージを明確に伝えられるか、話し方をレクチャーします。たとえば、核となるキーワードを設定し、それを繰り返し用いることで印象づけるといった方法が考えられるでしょう。

注意したいのは話の進め方、とりわけ構造化の仕方です。たとえば、本当は「全社のDXの話」をしたいのに、「社内の一部のIoT施策の話」だけで取材が終わってしまうと、記事で取り上げられるときにも小さな話になってしまいます。「全社でDXを進めていて、その代表例が○○部署のIoTだ」という構造で話さなければ伝わりません。

話す内容に加えて、話し方にもポイントがあります。絶対に伝えたいことを明確に強調し、絶対に間違えてはいけないところは落とさない、「取材モード」の話し方に切り替えてもらいます。

みなさんの所属する会社が大きな組織の場合、特に注意が必要です。普段の業務では危機管理的な視点に立つ方が多いためか、取材のときにもリスク回避にかたよった話し方になってしまいがちです。あまりに細かい事実確認を繰り返したり、必要のない謙遜をしたりして、一番重要なポイントがぼやけてしまわないように注意しましょう。

取材が始まる直前に、念押しのレクチャーをするのも効果的です。記者の方がどういった興味から取材を申し込んだのか、自社としてはどのようなテーマで話そうと考えているのかを今一度整理します。そして、想定質問や話し方の注意点を改めて確認してから、取材を迎えましょう。 

④記者へのアフターフォロー

ここまで話した3つの準備を徹底しても、思ったように取材に答えられなかったということもあるでしょう。その場合は、取材後にこっそりフォローすることもできます。

できあがった記事の修正を依頼することはできません。しかし、取材のあと「あのとき言いたかったのは、こういうことです」「このリリースを読んでみてください」などとさりげなくフォローすることで、記事のクオリティ向上に寄与することはできます。取材が終わっても諦めず、できることを考えてみてください。

今回は、取材を結果につなげるために広報担当者ができることを探りました。どんな記事も、取材する側とされる側の共同作業で作り上げるものです。広報としての準備を徹底し、より良いコミュニケーションを実現させましょう。

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