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スナックで人材交流を促進?──部署も世代も超えるカウンター越しのコミュニケーション

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企業がビジネスを進めていく上で根幹となる「コミュニケーション」。働き方が多様化し、コロナ禍でリモートワークの導入も進む中、コミュニケーションに課題を感じる場面も増えているかもしれません。

そんなコミュニケーションの課題を解決に導くヒントとして、近年注目を集めているのが「スナック」です。実は私たちStory Design house(SDh)でも、「自社でスナックをやってみたい」という議論が生まれています。

そこで本記事では、カヤック、freee、みんな電力、パナソニックの4社による「スナック」関連の取り組みを紹介します。

連載:ゆるい課題ラボ
会社組織には短中期的にやらなければならないことがたくさんある一方で、いますぐ着手しなければならないわけではないけれども、長期的な視点で検討したり、知見やネットワークを蓄積したりと、ゆっくり確実に取り組んでおきたい「ゆるい」課題があります。本連載では、SDhの社内でときどき話題になる課題やトピックを編集部がリサーチし、その成果を記事として社内外を問わず共有します。

自社でスナックを運営できないか?

「SDhでスナックをやってみたい」

ある日の社内ミーティングで、そんな提案が飛び出しました。私たちはPRやブランディングを手がける会社です。どうしてそんな突飛なアイデアが出てきたのでしょうか。

スナックといえば、カウンター中心のこじんまりとしたお店に人々が集い、共にお酒やカラオケを楽しむ場です。通常のバーと違うのは、いい意味で「おせっかい」をしてくれるママがいること、そして、店内にいる人々のあいだに独特の関係性が育まれることでしょうか。

初対面の人ともなぜか本音で語り合えたり、知人・友人のまったく新しい一面を知ったりと、スナックの中ではいつもとちょっと違ったコミュニケーションが可能になるから不思議です。

SDhでスナックの話題が出たのも、コロナ禍でリモートワークが増え、コミュニケーションのあり方を見つめ直したくなってきた頃でした。柔軟な働き方が可能になるなど、新しい働き方のメリットを実感しながらも、「濃密なコミュニケーションができる場がほしい」という課題も生まれていました。

そういった環境で「これから自社でやってみたいこと」を話し合ったとき、ひとりの社員から出てきたアイデアが「スナック」だったのです。

周りの社員の反応も上々。日常的にスナックに通う人はそれほど多くありませんが、スナックという空間については以下のように、ポジティブな意見が集まりました。

「一人でもふらっと立ち寄れる雰囲気が好き」
「自分を認めてもらえる、家でも職場でもない場所」
「一緒に行った人との距離感も縮まる」
「人と人をつなげる空間という点で、PRという仕事ともマッチしている」

コミュニケーションを促す社内スナック

「スナック」という場所が気になっているのは、SDhだけではありません。2010年代の半ば頃から社会的にも注目されるようになっています。

2015年には、アカデミックな視点でスナックをとらえるスナック研究会が発足。谷口功一教授(法哲学)をはじめとする人文社会科学領域の専門家たちが、日本特有の「やわらかい公共圏」の分析に取り組んでいます。同研究会の成果は2017年に谷口功一、スナック研究会編『日本の夜の公共圏 スナック研究序説』にまとめられ話題を呼びました。

その流れはビジネス界にも及び、大手ビジネスメディアにも、スナックをテーマとする記事が何本も掲載されました。日本経済新聞の「スナックやサウナでつながる 異色のビジネス拠点」、日経ビジネスの連載「昼スナックママに人生相談」、東洋経済オンラインの連載「スナックが呼んでいる」などがその例です。こうした記事のなかでは、コミュニケーションのかたちを変えたり、コミュニティ形成を促したりするスナックの働きに着目するものが多くみられます。

さらに、スナックを「イノベーションが生まれるサードプレイス」として捉えるビジネスパーソンも現れます。「起業家の集まるスナック」の立ち上げを目指したクラウドファンディングが成功するなど、スナックに可能性を見出す人が増えているといえそうです。

そんな中、オフィスの中にスナックをつくる企業が出てきました。こうした企業は、どういった背景でスナックをつくり、どのような運営で課題を解決しているのでしょうか?

本記事では、SDhスナック構想の参考事例として、さまざまなコミュニケーション、交流を促すきっかけとしてスナックに注目する4社の取り組みをまとめていきます。

1.カヤック「まちのスナック」

IT企業でありながら「地域資本主義」を掲げ、長らく鎌倉で事業活動をおこなうカヤック。これまでも企業主導型保育園事業「まちの保育園 鎌倉」や「まちの社員食堂」といったサービスを通じて、鎌倉に暮らし、働く人々のコミュニティを盛り上げてきました。

そんなカヤックが次に選んだ打ち手が「まちのスナック」プレスリリースによれば、「まちの社員食堂」を改装し、2022年9月2日にプレオープンしました。「鎌倉を愛するみんながつくる、気軽な夜の談話室」をコンセプトとして、ただお酒を飲むだけではなく、地域の人々が世代を超えてつながる場所を目指します。

ママ・マスターは日替わり交代で、カラオケがなく禁煙と、これまでのスナックとは異なるスタイルです。ママ・マスターを務めるのは、カヤックの社員やパートナーをはじめ、人気YouTuber「ボンボンTV」のメンバーで、カヤックの社員でもある「りっちゃん」などユニークな面々。

また、キャッシュレス決済対応にくわえ、コミュニティ通貨「まちのコイン」も活用するなど、お店とお客さん、地域の距離感を近づけるようさまざまな仕組みを設けています。

2.freee「スナック 燕」

クラウド会計サービスを展開し、急成長するフィンテック企業「freee」。同社のWantedlyに掲載された記事によると、会社が拡大するなかで、社員と経営陣の距離感部署間の交流といった、社内コミュニケーションの課題が生まれるようになったそうです。そこで目をつけたのがスナックでした。

同社の「スナック燕」は、福利厚生の一環として、五反田のコワーキングスペースやスナックを貸し切っておこなわれます。毎月経営チームのひとりがマスター・ママとなって、7-8名の社員をもてなし、親睦を深めようというものです。参加する社員は応募者からランダムに選ぶこともあれば、「入社1年以内の方を集める」など、コンセプトをもっておこなうこともあります。

下記の対談記事では、オフィスのある五反田に居酒屋やスナックが多いという地域性をいかすこと、社内ラウンジで肩肘張らずに語り合う社風の延長線上でコミュニケーションを活性化することなど、佐々木CEO自らが自社とスナックの相性の良さについて語っています。

3.みんな電力「スナック 再生」

「UPDATER(旧:みんな電力)」は、トレーサブルな電力供給の仕組みを提供する環境スタートアップ企業。「顔の見える電力™️」というキャッチフレーズのもと、電気の生産者・生産地がわかるかたちで電力を供給しています。

着実に事業を拡大してきたUPDATERですが、「Work Story Award2019」受賞時の記事にもあるように、社員数の増加に伴ってコミュニケーション不足が課題になったといいます。

以前は異なる部署間でのやりとりも活発で、代表の大石氏とも気軽に話せる会社でしたが、社員数が増えるにつれて、どうしても「縦割り」の側面が強くなったといいます。社員一人ひとりの強みも把握しづらくなり、経営層も「このままだと事業スピードにも影響が出る」と危機感を抱いていました。

そんなUPDATERで最初にスナックづくりを提案したのは、大石代表です。カウンター越しの距離感でお酒を酌み交わせば、ふだんの関係性にしばられず、本音を語り合えるのではと考えました。

ちょうど社員増加に伴うオフィス移転のタイミングだったため、「せっかくだから」と1室をまるまるスナックにすることに。「顔の見える電力™️」を掲げる会社らしく、店内には自社の発電所がある土地のお酒や特産品を揃えました。

大石代表がママを務めるこのスナックは、仕事のことからプライベートのことまで気軽に話せる場としてはもちろん、重要な社内会議や社外との打ち合わせにも活用されているのだそうです。ランダムで選ばれた社員と代表がスナックに集う定期的な交流イベントも開催し、経営層が現場の声を聞く機会としても役立っています。

4.パナソニック「PLAY with」

大手電機メーカーの「パナソニック」は2021年、コロナ禍でリモートワークが定着してきた時期に、社員どうしでスナックをオンライン体験するイベントを開催しました。

主催したのは、ワークスタイルの改革に取り組むチーム。「社内コミュニケーションが内向きになっている」という課題を感じていたといいます。イノベーションを生み出すためにも、部署という既存の枠組みを超えた「外向きのコミュニケーション」を目指したい。そういった考えから、普段と違う環境でざっくばらんに会話を楽しめる「スナック」という場に着目しました。

オンラインスナック横丁の協力のもと、本物のスナックやバーで活動している6人のママを呼んで、スナックに関する講義+スナック体験の2部構成で開催。多くの社員が参加し、中には役員の姿もありました。

ママという「プロのつなぎ役」を介することで、いつもとは違ったコミュニケーションが実現。役員も含めて、社内ではなかなか見ることのない相手の意外な一面を知る機会になったようです。

また、この社内スナックは、社員がママたちのファシリテーションスキルを学ぶ場としても機能しました。6人のママがそれぞれのやり方でその場のコミュニケーションを活性化させ、新たなつながりをつくっていく姿には、メーカーで働く人にとっても参考になる部分が多かったとのこと。東洋経済オンラインの記事では、参加した社員の声が詳しく紹介されています。

比喩としてのスナック

4社の事例をみていると、「スナック」という場に企業が込める思いや期待感がみえてくるようです。特に共通しているのは、自社の抱えるコミュニケーションの課題を解決するために、スナックらしいコミュニケーションやリラックスした雰囲気が有効だと考えられている点ではないでしょうか。

別の見方をすると、これらの事例では、アルコールやカラオケ、タバコ、ママ・マスターの存在といったいわゆるスナックらしい要素をすべて取り込もうとしてるわけではありません。お店として広く地域の方に向けて運営されているカヤックの「まちのスナック」であっても、ガラス張りの開放的な内装や日替わりのママ・マスターや禁煙といった形態といった点において、古くからあるスナックとは少し違っています。

言ってみれば、「スナック」という言葉のイメージやニュアンス、その言葉で表される空気感のようなものが、人々の注目を集めているのでしょう。ここにおいて「スナック」は「比喩」として用いられているとも捉えられそうです。

そこで次の記事では、さらに比喩的な側面の強いもの、イベント企画などの形式としてスナックをもちいているものを中心に取り上げていきたいと思います。企業視点でいえば、今の取り組みの延長上で、より気軽に挑戦しやすいとも言えそうです。ご期待ください。

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