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小さな会社のバックオフィスには何が起きるのか? あるいは、好きなことを仕事にしているわけではない私たちへ

Story Design houseの鈴木です。
SDhは企業や組織のコミュニケーションを戦略的に支援しています。

創業7年目、社員10名ほどのこの若く小さな会社で、私は1年半ほど前からバックオフィス業務を担当しています。

バックオフィスは、いわば「本業以外の、本業を支える仕事」
会社が営んでいる事業ではなく、会社を営むうえで付随的に発生する裏方仕事です。
総務・経理・財務・人事・法務・情報システム・広報と呼ばれるあたりの諸々を担当しています。なんだかいろいろやってますね。

今回のnoteでは、小さな会社のバックオフィスには何が起きるのか?という話をしたいと思います。

すべてのこぼれ球を拾う

バックオフィスには「ほとんどあらゆること」があります。

たとえば、防災訓練を企画することもあるし、古くなった家電を捨てることもある。振り込まれるはずの入金がなければ連絡を取りますし、源泉徴収税額の計算もします。求人広告を書いたり採用面接をしたり、雇用保険や社会保険の手続きをしたりもします。

契約書を精読して交渉することもあれば、印紙税を確認して収入印紙を貼ることもある。入社したスタッフにG SuiteやSlackのアカウントを付与したりもするし、「何もしていないのにパソコンが壊れた」と言われて溜息をつくこともあります。ウェブサイトやSNSを運営するかもしれないし、不思議な電話に対応するのも担当業務かもしれません。

従業員数の少ない会社では、バックオフィス業務の担当者はせいぜい1人。専属スタッフを置かずに、社長が事業の片手間に対応していることも多いようです。
そうした規模の組織でバックオフィスを担うときに必要なのは、「ぜんぶ俺がやる」とまず思うこと。「自分が忘れたら他の誰も気付かない」と認識する。そして、その状況を消していきます。

みんな仕事が忙しい。忙しいので些末なことは忘れてしまいます。他の人が忘れたものを、自分だけは忘れずに拾う。すべてのこぼれ球を拾う。火中の栗を余さず拾う。

どんどん拾っていると落とされやすいものがわかります。ああ、この仕組みじゃたしかに落ちるよね、うんうん、そりゃそうだ。仕組みを憎んで人を憎まず、仕組みは変えましょう。気軽に変化できることが、きっと小さな組織の魅力です

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(リモートワークに備えてウォーターサーバーの発注数を減らさなくてはと考えている筆者)

拾ったものはあるべき場所に

総務の仕事は、たとえばトイレットペーパーを切らさないことだったりします。定期的に買うものの在庫チェックは面倒だから、Amazon定期便などを使いましょう。

総務の仕事は、たとえばゴミの日を忘れないことだったりします。Googleカレンダーに定期的な予定を入れておいて、さらにSlackの全体チャンネルなどに連携させておけばいいんです。自分がゴミの日を忘れても、他のスタッフに気付いてもらえる仕組みがあればいい。

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SlackとGoogleカレンダーの連携くらいなら簡単にできます。Google Apps Scriptをつかって単純なbotを作ることも、根気がそれなりにあって英語で検索するのを嫌がらなければ、職業プログラマでなくてもできます。せっかくなので、会議室の予約状況をSlackに投稿するコードを貼っておきます。

経理の仕事は、たとえば請求書をすべて支払うことだったりします。すべて。すべて? どうやって把握すればいいんでしょうか。取引先リストを適切に運用すれば、工数を減らせるでしょう。営業目標管理シートなどがあれば、それもうまく使えるかもしれません。会社の活動状況が可視化される仕組みをつくりましょう。

経理の仕事は、たとえば小口現金の管理だったりします。小売業でもないのに小口現金が必要だろうか、いやない。よし、現金をやめよう。 Slackで依頼されたら会社のAmazonアカウントなどとかですぐ買ったらいい。みんなにSuicaを支給してもいいですね。

法務の仕事は、たとえば契約書を印刷して製本して捺印して送付状をそえて郵送することだったりします。遠大。よし、紙の契約書をやめよう!  クラウドサインを使いませんかと積極的に提案しましょう。便利です。便利が正義なんです。

こちらの記事にも、現金をやめたり紙の書類をやめたりした話が紹介されています。素敵ですね。

二度とボールが落ちないようにするだけの簡単なお仕事です

私はこれまでいろいろな規模の組織で働いてきました。上に挙げた事例は現職での経験談だけではありません。

小さな組織のバックオフィスには、ほとんどあらゆることがあります。すべてをひとりで回すために尽力するのではなく、自然に回るように業務を整えていくことに力を使いたいと思っています。

忘れても回る仕組み、落としても完全には落ちない仕組み、無駄な工数を消す仕組み、そういう仕組みをつくる工程は、案外楽しいものです。

状況をよく観察し、因果関係を把握し、改善策を見出し、周囲に提案しつつ実行し、前よりもよい状態を保つ。
バックオフィス業務は、多様なスキルを求められる仕事です。やっていきましょう。

「ハイパーバックオフィサー」がいると生産性が上がるんじゃないかと言っていた方もいました。その通りですよ、と思います。

歴史の長い組織や、人数の多い組織には、いろいろな事情があって変化しにくいこともあるでしょう。
この状況下においてなお、捺さなくてはいけないハンコがあり、開封しなくてはならない郵便物があります。
いずれにしても、幸せになる人が増えるような変化が増えていったらいいですね。

仕事を減らして、新しい仕事をつくる

仕組みを整えていくと、バックオフィス業務は減らすことができます。余裕ができたら今度はどうしようか、という話をしましょう

仕事のクオリティを上げる方向と、違うことを仕事にする方向があるのかなと思っています。
バックオフィス業務にどのような品質が求められるのか。判断の分かれる点かもしれません。

決算業務を税理士に依頼するときや、法律相談を弁護士に依頼するとき、社会保険手続きを社労士に依頼するときに、彼らに期待する点数は100点です。99点ではなく100点。

翻って、小さな組織のバックオフィス担当者が目指すのは87点だと私は思っています。
どれほどコストを掛けても、無限に近い業務のすべてで100点をとり続けることはできません。高品質が要求される業務は、専門家に外注するべきです。
ほどほどで会社が回り続けるようにして、空いた時間で他のことをしましょう。

私の場合は、仕事として文章を書くようになりました。

これまでもバックオフィス業務の一環として無数の文章を書いてきました。以前勤めていた出版社で、たくさんの文章がこぼれては拾われ、磨かれていくのを見続けてきたことも、私の糧になっています。ありがとう。

バックオフィスで培ってきた「落ちたものを拾う」「落ちそうなものに気付く」といったスキルは、文章を書くときにも活きているような気がします。よい文章とよくない文章を見分けることができたり、誤読される可能性を恐れたり、なにか伝え忘れているような気がして立ち止まったり。
深く染みついた87点主義はしばしば邪魔になりますが、チームメンバーにたくさん助けられながら書いています。

このnoteでもいくつか記事を書きました。

この記事は「note編集部のおすすめ」欄にも掲載され、多くの方に読まれました。
むかしから本を読むのが好きで、出版の世界も好きでしたから、最初に書いたこの記事を広く読んでもらえたのは嬉しい出来事でした。

それにしても、これまでずっと裏方だったので、表舞台に立つのはちょっと落ち着かない気持ちもあります。いま書いているこの記事もそうですね。

誰かのために働くこと

私は、誰かを支える仕事が好きです。

「誰か」とは不特定多数のことではなく、自分にとって支える意味を感じられる特別な存在のこと。魅力的なリーダーやメンバー、独創的なクリエイター、革新的な事業。世界を変えようとする意志。
どうせ働くのなら、好きな人やコトのために働きたい。自分の好きなものを支えられていると感じられることが、私にとっての働く価値かもしれません。

「好きなことを仕事にしよう」という神話を私は信じていません。だって私は、仕事に結びつくような好きなことは持っていないから。でも働くことは案外楽しいから。

みずから成し遂げたいことも特にないし、お金を稼ぐことにもほとんど興味がないけれど、大切な誰かを支えるために、私にできることがある。そんな仕事をいまできている。幸せなことだと思います。

まだ出会う前の誰かへ

Story Design houseという会社には、大切な言葉があります。

「意志あるところに道をつくる」。

私も、道をつくりたい。
さまざまな場所で働くさまざまな人たちが、自分のこと、自分の仕事のことを語り始めています。小さな組織のバックオフィス業務についての言葉は、まだ足りないように思います。

あまりにも先の見えない、これまで通り働き続けることの正しさも確信できないこの世界で、それでも私たちは価値を生み出し届けていく。こうした文章などが、人知れず奮闘する誰かの足元を照らす灯りになりえたらと願います。

もし、これを読んだあなたがバックオフィスをどうにかしたいと感じていたら、お気軽にご連絡ください。あなたを好きになれたら、喜んでお手伝いしにいきますから。

Story Design houseでは「意志あるところに道をつくる」をミッションとして、さまざまな企業のPR活動を支援しています。是非、ウェブサイトもご覧ください。
お問い合わせはこちらから。 https://www.sd-h.jp/contact


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