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食品劣化を防ぐ食べれるフィルムから、世界初・ニッケルチタンのインプラントまで:AEA2020速報レポート

アジア・アントレプレナーシップ・アワード(AEA)は、2012年より毎年開催されている、成長著しいアジアのスタートアップを集めたイノベーション・アワード。アジアから優秀なテクノロジーをもつ起業家・スタートアップが集まり、社会課題解決に繋がるビジネスプレゼンテーションを競う。

本年はアジアの12の国・地域から先鋭のディープテック・スタートアップ30社が集結。コロナ禍ということもあってAEA初の全編オンライン開催となり、2020年10月27日(火)から29日(木)まで行われた。

AEAはスタートアップの中でも、ディープテックを扱う企業が中心となる。ディープテックとは、最新の研究成果や革新技術に基づいて、社会に大きなインパクトを与えうるビジネスのことをいう。先鋭的なテクノロジーによって、社会に変革を起こす取り組みを奨励するのが本イベントだ。

昨日、3日間に及ぶプレゼンテーションが終了した。本記事ではファイナルセッションの結果をいち早く紹介する。

今年のテーマは「ニューノーマル」

今回のAEAは、コロナ禍以降の生活様式「ニューノーマル」の世界で重要とされる4つのテーマ(ヘルスケア、コミュニケーション、働き方、Quality of Life)に関するソリューションを持つテック系スタートアップが多く集った。

アジア各地のインキュベーター、アクセラレーター、大学等のスタートアップ支援機関からの推薦によって集まったスタートアップから、ファイナルセッションに残ったのは6社。

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(ファイナルセッションに残った6社)

各スタートアップは、プレゼンテーションと審査員によるQ&Aを約30分間行い、自分たちの技術の魅力と事業展開について熱弁を振るった。審査員からの厳しい質問に答えようとする登壇者のエキサイティングな応答も見どころだった。

各部門賞はAI、機械学習系のソリューションが多数

ファイナルセッションに残った6社の概要を、受賞した賞とあわせて紹介する。まずは各部門賞を受賞した企業のソリューションについて。

・オーディエンス賞「Nitium Technology Sdn Bhd」(マレーシア)

新材料・低コスト製造技術による多孔性ニッケルチタン(NiTi)製の歯科インプラントを提供。ニッケルチタンのインプラントを初めて開発した。世界規模のインプラント企業として、現在は臨床試験を進めている。

・マイクロソフト賞「Brain Pool Tech Private Limited」(シンガポール)

地図や地形のデータを統合して高精度な3Dマップを、リアルタイムのトラッキングシステムと統合してライブマップ化するサービス。各モジュールをAIによって分析することができる。日本では、リアルタイムの地図データを防災や減災に役立てられないかとの期待も。

・ライフサイエンス賞「ENDIMENSION TECHNOLOGY PRIVATE LIMITED」(インド)

インターネットを介して画像を共有して遠方でも診断できるという、AIクラウドプラットフォームを開発。インドは放射線医が少なく、誤診率が30%という。AIを使うことによってセカンドオピニオンを見つけやすくするサービスだ。

・日本ベンチャー学会賞、IP Bridge賞「Mantra Inc.」(日本)

人間と同レベルの翻訳を実現する高精度な機械翻訳エンジンを備えた、漫画翻訳ツールを開発している。アメリカでは100億ドルに相当する漫画が、海賊版で読まれている。いち早く翻訳版を出すことで、海賊版を減らしていく。

IP Bridge賞「Chronoptics Limited」(ニュージーランド)

同賞2社目は、高度な飛行時間深度センシング技術を用いた3Dカメラソリューションを展開するニュージーランド企業が受賞した。

ディープテックらしいプロダクトが1位、2位を獲得

いよいよアワードを受賞した3社の紹介にうつる。審査基準は、事業の革新性と実行力、チームマネージメント、そしてプレゼンテーションスキルなど。その総合力だけでなく、AEAならではの観点である日本の大企業とのリレーションシップも重要となる。熟慮の末に優勝者が選ばれた。

・3位「Onesight Technology Co.,Ltd.」(中国)

AR・AI・BIM・IoTといった技術を駆使して、建物のライフサイクルを管理するソリューションを開発。建築中の建設現場において、ARやMRを用いてリアルタイムに経過を可視化することができる。シミュレーションと現実との誤差が小さいことも特徴とのこと。

・2位「Nitium Technology Sdn Bhd」(マレーシア)

さきほどオーディエンス賞で紹介した「Nitium Technology Sdn Bhd」が2位でも受賞。日本の製造業とも連携しながら品質改良し、高齢化が進む日本社会に普及を進めたいとの姿勢が印象的だった。

・優勝「Eden Agritech Co., Ltd.」(タイ)

野菜や果物に塗布することで食品を劣化から守る透明な可食フィルム。同社のプレゼンテーションによれば、フレッシュカットの野菜や果実のうち20〜40%は廃棄され、年間約6,200億ドルもの損失になっているという。

この可食フィルムによって農作物の新鮮さが維持されれば、食品廃棄を減らすことができるというわけだ。また、農作物の寿命が延びれば、新しい市場を求める生産者にとっても有益である。傷みやすいマンゴーであっても、5〜10日ほど可食期間が延びるというから画期的な技術だ。

審査員からは「マーケット規模の大きさや、食料廃棄を40%減らすという問題解決の意識」が評価された。受賞者であるEden Agritech Co., Ltd.の代表は「食の安全、食の廃棄などの問題解決のために戦い続けていきたい」という意気込みを語り、優勝賞金300万円とトロフィーが授与された。将来、可食フィルムが普及する未来を想像できる挨拶だった。

入賞結果発表 26 (1)

授賞式後は、参加者がオンライン越しに一同に集まる記念撮影があり、ネットワーキングが行われた。オンライン上でのプレゼンテーションであっても、画面越しに熱気が大いに伝わってきた。新しく深いテクノロジーが集まる場として成熟したAEAに、来年も期待したい。

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本マガジン「DeepTech Imapact」では、後日、各受賞企業の技術やビジネスを詳細に紹介する記事を掲載予定です。楽しみにお待ちください。

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