見出し画像

学生の「広めたい!」に効く、PR・広報の考え方を知る6冊

こんにちは、Story Design houseインターンの鈴木です。

みなさんは社会に大きな影響を与える存在と言ったら、どのような人を思い浮かべるでしょうか。テレビの中に出てくる芸能人やインフルエンサーがすぐに想像できるでしょう。しかし、それだけではないはずです。Story Design houseが手がけるPRや広報といった手法は、ときに個々人の影響力以上のインパクトをもたらすのです。

そんなPRや広報に私が興味を持ったのは、大学でのサークル活動で、どのように発信すればもっと「知ってもらいたいこと」が相手に伝わるのか悩んでいたからです。そこでこの記事では、同じような興味を持っている学生の方、特に学生団体など自主的な活動をされている方に、PRや広報の考え方を紹介していきたいと思います。

具体的には、Story Design houseの社員の方々から薦めていただいた書籍紹介を通じて、PRや広報には「何ができるのか」、「どのようにしているのか」、「そもそもなぜ必要なのか」の3点をまとめていきたいと思います。

PR・広報には何ができるか?

まず、PR・広報がいかに実社会で効果を発揮しているか、事例で理解できる本を紹介します。

最初にご紹介するのは『広報の仕掛け人たち』シリーズの2冊です。このシリーズを読むと、PR・広報に従事する人の仕事ぶりがよくわかります。教科書的なものより実際になにが行われているか知りたい! という方におすすめです。

「広報の仕掛け人たち」シリーズ

2016年に出版された『広報の仕掛け人たち PRのプロフェッショナルはどう動いたか』は、スターバックスの事例をはじめとして、川崎市の地域活性化など、企業や自治体によるプロモーションやブランディングの事例が9つ取り上げられています。

なかでも興味深いのは、ニューカレドニア観光局とキャンドルウィックの事例です。ニューカレドニアでは、30年ほど前から「天国にいちばん近い島」というイメージがありました。しかし、新たに若い女性に訴求するためにイメージ刷新を図ろうと試みており、その過程には、PR会社らしい様々な仕掛けがありました。

まず、旅好きな女性に対して、旅行ガイドブックの刊行を通して情報を伝える接点を作ります。単純に広告を出稿したりイベントを開催したりするのではなく、20~30代の働く女性たちに人気のガイドブックを利用したのです。これによって、ターゲットを絞り、かつ伝えたい情報をより多く伝えることができます。

また、旅好きな女性へのPRを進める一方で、ニューカレドニア観光にあまり興味のない、将来の新規顧客に対しても策を講じています。その一例として、水着の開発・販売があります。20~30代女性に人気の水着ブランドとコラボし、ニューカレドニアのイメージにあうオリジナルスイムウェアを開発、女性に人気の店舗で販売したのです。さらにその店舗でポップアップストアを開き、ニューカレドニア料理の提供や航空券が当たるハッシュタグキャンペーンを開催しました。

もちろんこれはヒット商品の販売が目的ではありません。ニューカレドニアに関心がない人でもハイセンスな水着という入口から、いつの間にかその世界観に魅了され、気付けば「ニューカレドニア」が気になってしまう。そんな出口へと誘う仕掛けができているのです。

次に、同シリーズからもう一冊。2020年に出版された『広報の仕掛け人たち 顧客の課題・社会課題の解決に挑むPRパーソン』です。これは前掲書と比べて、社会課題にフォーカスした事例が数多く掲載されています。

そのひとつが、「熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会×ロボット×マテリアル」の事例です。このプロジェクトでは、熊本県八代市の特産品である一方、中国産の畳の流入から窮地に立たされていた畳の原料「い草」を「食べられるお箸」としてプロモーションしたものです。

日本におけるライフスタイルの洋式化や安価な中国産の畳の増加など、需要が下がり続ける畳。ただ「畳って気持ちいいよね、買ってください」といったコミュニケーションをしても状況は変わりません。そこで、「い草=畳」という多くの日本人の考えるイメージを覆す、「い草=野菜」という意外性のある視点を生み出したのです。これによって「い草」は可食であり、栄養価も高いという気付きを与え「食べてみたい」という好奇心を喚起することができます。

その結果、メディアに対しても地場産業の活性化という切り口だけでなく、「い草は栄養価の高い野菜」や、環境に優しいイートレイ(食べられる食器)といった切り口を提案することができ、取材獲得につながったのです。国産い草が危機にある状況を、社会的視点から伝えることができました。

『広報の仕掛け人たち』シリーズを読むと、PR・広報がいかにターゲットとの双方向のやり取りを重視してプランニングしているかがわかります。テレビCMなど広告的な手法を取ることが難しい状況であっても、届けたい層に向けてメッセージを発信することができるのです。

「食べられるお箸」を考案した株式会社マテリアルの関航氏は、PRの効果は「目指す状態や目的に対して、ステークホルダーと望ましい関係を構築できたか」にあると述べています。この視点は、小規模な組織や団体が「伝えたい」ことを発信するために重要なポイントではないでしょうか。

「ドキュメント 戦争広告代理店」

ドキュメンタリーや小説のような物語が好きな方には、少し古い作品ですが『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』がおすすめです。

本書は、ボスニア紛争における「民族浄化」の報道と、その裏側で情報操作に従事したアメリカの凄腕PRマンを描いたドキュメンタリーです。

ボスニア紛争では、「セルビア=悪」という構図がつくられ、世界中がセルビアを非難したといいます。そのような世論形成の過程で、PRパーソンがどのような動きをしていたのか。アメリカ政府や国際機関に対して働きかけたり、西側の記者がセルビアと敵対するボスニアヘルツェゴビナに肩入れしたくなるように定期的に情報提供を行ったり。

読了すると、メディア報道をいつものように見られなくなるかもしれません。PRのもたらす効果やスケールの大きさを感じ取れる作品です。

PR・広報はどうやっているのか?

次に、さらに広報やPRがどんなことをやっているのか、その具体的な内容に踏み込む2冊を紹介します。

「逆襲の広報PR術」

PR・広報が効果をあげるために、実際のところPR会社や企業の広報担当者はどのようなことをしているのでしょうか?

以前このnoteでStory Design houseの新井さんも紹介していた『【小さな会社】逆襲の広報PR術』では、この疑問がとても丁寧に、かつすぐに実践することができるほど詳細に記述されています。著者自身の「小さな会社」での経験から、中小企業やベンチャー企業がどのようにPR・広報することが必要なのか、その具体的なノウハウがわかります。

PRについての教科書やインターネット上の記事を読んでいると、「PRとは~である」といった抽象的な定義に終始しているもの、「メディアアプローチ」や「プレスリリース」といった言葉の教科書的な説明にとどまっているものが多々あります。本書はそうではなく「すぐにでも行動を起こしたい」という方に役立つ一冊です。

とりわけ興味深いのは、PRや広報がどのような課題に応えられるか書かれている箇所です。本書によれば、企業規模が小さかったり、社歴が浅かったりするために「会社の信用」がなく、なかなか契約を取れない。そんな課題をもつ組織こそがPR・広報の力を借りるべきだというのです。

解決策として提示されているのは「「広告」ではなく「報道」でマスコミに露出すること」。広告という主観的な情報ではなく、報道という『“信頼のおける第三者”によって発信された、客観性のある情報』を利用するべきだ、という。伝えたい情報を自分自身で語るのではなく、「信頼のおける第三者」が発信することが重要だというわけです。

私がサークル活動で国際問題に関する情報発信を行っていたときにも「信頼のおける第三者」の発信に助けられた経験があります。そのサークルでイベントを行った際に、自分たちの発信以上に、同じ大学の学生が運営する15,000人ほどのフォロワーがいるアカウントに取り上げてもらうことで大きな効果が生まれたのです。

こうしたインフルエンサーではなくとも、周囲から信頼されている友人に取り上げてもらったり、他人にオススメしてくれないか相談したりすることでPR効果を大きくすることができると思います。

「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」

また、PR・広報を直接取り上げているわけではありませんが、そこにも通じるコミュニケーションの重要なスキル「人を惹きつけること」につながる本を紹介します。

本書は、元Apple CEOのスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションがなぜ人々を魅了し、熱狂させたのか、実際のプレゼンを紹介しながら、ジョブズのプレゼンの法則を解説しています。

この本のなかでPR・広報に通ずる重要なポイントは「一番大事な問いに答える」ということです。本書によれば、一番大事な問いは「なぜ自分(情報の受け取り手)が気にかける必要があるのか」だといいます。聞き手はこの問いを常に自問しており、それに答えることができれば、聞き手を話に引き込むことができるというわけです。

本書はプレゼンテーションのノウハウを伝える本ですが、そのなかに企業のプレスリリースについて、その大半は「気にかける必要がない」ものだと語られている箇所があります。たしかに一般の人にとっては、企業のCEOが変わったり、報告書の最新版が出たりといったリリースは興味を惹くものではないでしょう。そこで聞き手が聞くメリットを明確に伝える必要があるのです。報告書の最新版が出たのであれば、そのなかで明らかになった驚くような情報を、冒頭からできるだけ繰り返して伝えた方がいい。そんなテクニックが書かれています。

これはPRや広報に限らず、何かを伝えるうえでは非常に重要な考え方でしょう。

なぜ、いまPR・広報なのか?

最後に、なぜPR・広報が必要なのか、またこれからどうなっていくのかを論じた本を紹介します。

──本の紹介に入る前に。みなさんはこの「投票はあなたの声」という動画をご存知でしょうか。この記事を執筆しているのは衆議院議員選挙の直前です。これは菅田将暉さんを始めとする人気俳優やアーティストが投票への参加を呼びかける、自主制作動画です。少しこの動画のことを考えながら読んでみてください。

「広報DX 次世代の社会を担う情報発信の新指針」

本書籍は、「広報におけるデジタルトランスフォーメーションをいかに達成させるか」をテーマに、2020年に首相官邸 秋葉内閣総理大臣補佐官室(当時)によって開かれた「全世代型社会保障に関する広報の在り方会議」の構成員によって書き下ろされたものです。(引用)

この本は、社会保障に関する広報の在り方を考察したものです。そのため、議論されている内容は行政に関するものとなっています。企業と行政では広報の役割は大きく異なりますが、そこには企業と行政、さらには学生までもが共通で持っておくべき重要な視点がありました。

それは、とりわけ若者に対する広報の在り方として、「お知らせ型の広報」をするのではなく「意思決定に寄り添う広報」が必要である、という点です。本書のなかで株式会社博報堂の立谷光太郎氏は、毎日スマホに触れている世代は意思決定において失敗したくないと考えていること、また、そのために周りの体験談や先行知識層の行動を見ようとするなど結果をイメージしようとすると述べています。そこで、若者向けの社会保障制度の広報においては「制度を使うとこうなる」、「制度を使うにはこうする」といった政策の結果や最短プロセスが分かるように情報を発信することが大切だといいます。

これは学生団体などの小さな規模でのPR・広報でも同様でしょう。伝えたいことを発信するだけでなく、その情報によって相手がどんないい結果を得られるのか、示すことができるような形で情報を発信するのです。

また、その情報発信においては、常に双方向の交流ができるSNSの役割が重要になると考えられます。デジタルの隆盛により、WEB上で人々がどのように評価するかが行動喚起につながるようになっています。メディアを経由せず、一般生活者の評価や共有を巻き込むことが、さらなる次の共有を生むきっかけになるのです。

広報におけるDXとは、多様化していくライフスタイルのなかでどのように伝えたい情報を相手に届け、接点を持てるように仕組むか。そして、その接点が点で終わらないように、デジタルを手段にして相手に寄り添いながら、行動を喚起できるか。こうした問いに向き合うことではないでしょうか。

その意味で、最初に提示した「投票はあなたの声」は、PR・広報が目指すべき目標の1つになるのではないでしょうか。この動画に行政は全く関与していませんが、10月21日時点で約480万回再生と、大きな反響を呼んでいます。本書を読むなかで、今後のPRや広報は、このような市民による自主的な行動が巻き起こる状況を作り出すことが重要になると考えるようになりました。

──6冊の書籍を通して、「広めたい」という想いを持つ方に役立つPRや広報の考え方を紹介してきました。一般生活者の双方向の情報発信によって情報が拡散していく潮流は、今後もますます進んでいくと思われます。そのなかで「伝えたい」ことを発信し、「知ってもらう」ためには、PR・広報という考え方が不可欠になるはずです。興味のある方は、ぜひこれらの本を読んでみてください。

(文:鈴木渚生)

Story Design houseでは「意志あるところに道をつくる」をミッションとして、さまざまな企業のPR活動を支援しています。是非、ウェブサイトもご覧ください。お問い合わせはこちらから。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!