広報の必須スキルを探る
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広報の必須スキルを探る

連載「広報の現場から」
PR会社にいると「広報部を立ち上げたい」「広報人材を育ててほしい」という相談をいただくことがあります。外部のPR企業と契約するまでではないものの、広報部門の必要性を感じて社内で人材を育てたいと考える企業も少なくありません。それでは、どういう人が広報に向いているのでしょうか。本連載では、広報を必要とする企業や、これから広報の仕事をしてみたい人に向けて、広報現場で求められるスキルをStory Design houseの森が探っていきます。これまでの連載記事はこちらからお読みいただけます。

連載「広報の現場から」第1回では、広報にどのようなスキルが必要かを考えていきたいと思います。一般に広報職といえば「文章が旨い」「企画力がある」「業界に詳しい」「トレンドに敏感」など、専門的な技術をイメージする人が多いかもしれません。

もちろん、そうしたスキルもあるにこしたことはないでしょう。しかし、特定の業種や職種に限らないポータブルスキルや、社会人としてのスタンスのほうがより重要だと私は考えています。

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森 祥子(もり・さちこ)
Story Design house株式会社 Senior PR Consultant。ベンチャー企業から大企業まで、新たな事業開発に取り組む会社の成長戦略をコミュニケーションから描く。1000人クラスの大規模イベントや、演出にこだわったプレスイベントも得意。

広報に必要な「気が利く」スキル

これまでさまざまな広報担当の方と関わる中で、共通する特性があることに気が付きました。それは「優れた広報担当者は、ちょっとしたところで気が利く」ということです。では「気が利く」とはどういうことなのか、私の体験から一例をご紹介しましょう。

以前、雨の日に、とある広報担当の方に届け物をしました。無事に用件を済ませて帰社すると、その方から「お天気が悪い中、ご足労おかけしました」というメールが届いていました。

このメールは、広報の仕事を進める上で必須の連絡ではありません。しかし、この一通のメールを受け取ったことで、私はこの広報担当の方はもちろん、この方が広報を務める会社やブランドそのものにも、それまで以上の好印象を抱くようになりました。

こういった細やかな配慮は、広報に限らずさまざまな職種で一定程度必要とされることです。しかし、広報はほかの職種に比べても、気が利くスキルがよりいっそう重要だと私は思っています。

広報担当者には「会社・ブランドの顔」としての役割があるので、誰に対しても好印象を残せる人が向いています。ここは、営業担当者とも共通しているかもしれません。

違いとしては、営業担当者のコミュニケーションは主にお客様との取引や関係づくりにあるのに対して、広報担当者のコミュニケーションは記者やメディア関係者等に対するフラットな情報提供にあります。フラットだからこそ、ともすれば広報のコミュニケーションは淡白な関係にもなりえます。そうした状況で、相手により良い印象を与えられるかが問われるのです。

社外だけじゃない、社内調整こそ広報のカギ

さらに、きわめて幅広い関係者とコミュニケーションを取る点も、広報という仕事の特徴です。記者と関わるのはもちろん、社外にいるさまざまな立場の関係者とも接点を持ちます。さらに社内では、取材などに出てもらうために、経営陣やクリエイターなど各職種のハブとなって調整をおこなわなくてはなりません。

こうした幅広いコミュニケーションの各所で、その場に応じた適切な対応が求められます。そのとき、相手に応じて気配りができるかどうかが、広報の成果を大きく左右するのです。

なかでも見過ごされがちなのが社内調整のスキルです。例えば「製造現場のようすを写真に撮って伝えたい」と思ったとき、重要なのは企画力や写真の知識ばかりではありません。「どうしたら関係者に気持ちよく協力してもらえるか」を想像し、彼らのために細かく気を利かせる力がじつは大切なのです。

この例では、企画初期から現場のメンバーに相談し、ともにプロジェクトを進めてもらう姿勢で接する必要があるでしょう。相談が遅れると、魅力を伝えにくいどころか、現場の仕事の邪魔になるおそれすらあります。また、カメラ担当者に最高の瞬間を収めてもらうには、事前にしっかり説明して、目的に合う機材を準備してもらう必要があるはずです。

どんなに企画がすばらしくても、関係者が協力してくれなければ、広報の仕事は成り立ちません。むしろ、すべての関係者が協力したくなるような環境をかたちづくることが、広報の仕事の本質なのかもしれません。

「気が利くかどうか」は「朝型か夜型か」に近い?

ここまで例にあげたようなちょっとした気配りは、周りから手取り足取り教えてもらうようなことではありません。もし面談日時のような必須の連絡を怠ったら、誰かに指摘してもらえるでしょう。しかし、面談後のフォローメールを送らなかったからといって、相手から何かを言われることはありません。

また、たとえ周囲が「フォローメールを送るといいよ」などとアドバイスしても、それに納得してメールを送る人ばかりではありません。そういった気配りにあまり意味を感じない人もいると思います。前者と後者のどちらが良い・悪いというわけではありません。

むしろ、気が利くかどうかは、朝型・夜型のような特性に近いものかもしれません。そのうえで、広報を担当するのであれば、気が利くタイプの人材のほうが適していると考えています。

広報に向く「気が利く人材」の見つけ方

それでは、広報に向いた人材はいったいどこにいるのでしょうか? まずは社内で探してみましょう。そのとき、企画力やSNSへの知見などを目印にするのはおすすめしません。連絡の端々に気遣いを感じさせる人、社内調整がうまい人、近い部署に限らず幅広く人間関係を築いている人……こんな「気が利くタイプ」の人材が、広報に向いている人材です。

特に小さな会社では、適性のありそうな人材が見つからないこともあると思います。そういう場合には、長い目で人材育成に取り組むことももちろん選択肢のひとつではありますが、まず最初にやるべきことは社長自身が広報担当者になることです。

社長というポジションにはもともと、社内外とのコミュニケーション力や調整力、幅広い相手への気配りと柔軟な対応力、そして企画力と実現力が求められています。お気づきかと思いますが、これらのスキルはすべて、広報担当者にも求められるものです。

これを逆に捉えると、広報には本来、社長と同じくらいジェネラリストであることが求められるということです。そのようなポジションに適した人材が社内に見つからないのは、それほど不思議なことではありません。広報を任せられそうな人材がいないのであれば、社長自身の広報力を上げていきましょう

もちろん、社長一人が広報のすべてを担当するのは大変です。そこでおすすめなのは、広報部分のタスク処理のみを担当する、サポート係のようなポジションを設けることです。

このサポート係に「気が利くタイプ」としてのポテンシャルがある人材をつければ、社長が広報に奮闘する姿をすぐそばで見るうちに、広報に求められるスタンスやポータブルスキルを獲得し、立派な広報担当者に育っていくかもしれません。

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