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老舗建材商社は、いかにしてゼロから広報活動を始めたか──「自ら発信できる仕組みづくり」で好循環を生む:野原ホールディングス

PR COMPASS

1598年の創業、1947年の会社設立以来、老舗の建材商社として実績と知見を積み重ねてきた野原ホールディングス株式会社。変化する時代への柔軟な対応力をアイデンティティの一つとする同社グループはいま、BIM(Building Information Modeling)やVRなどのデジタル技術を用いた新規事業に取り組み、「デジタルに強い建材商社」としてのイメージを確立。
 
さらには、オフィスビルの空室対策としてレンタルキッチンスペース「Patia」や、国内初のグッドデザイン賞受賞商品のみを取り扱う専門店「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」の運営など、コンシューマー向けにもビジネスを展開しています。
 
こうした事業の拡がりに合わせて、経営戦略として広報にも力を入れるようになりました。同社に「広報チーム」ができたのは2017年と、意外にもごく最近のこと。長い歴史を持つ野原ホールディングスですが、新しい時代に適応して企業をさらに成長させるために、広報活動に注力していくことになります。
 
Story Design house(以下、SDh)では、同社の広報機能強化に伴走し、メディアリレーションの構築から発信内容の刷新、そして広報業務の自走体制の整備までをサポートしてきました。
 
今回は、そんな野原ホールディングスで広報・PR業務を一手に担い、ホールディングスとしての発信はもちろん、グループ各社の広報体制づくりにも取り組んできた齋藤綾さんにお話を伺いました。話題は立ち上げの経緯からグループ内で広報への協力体制を築いてきた過程、PRを通じた社内外の変化まで多岐に渡ります。聞き手は、同社の広報PRに伴走するStory Design house・森が担当しています。

野原ホールディングス株式会社 マーケティング部 齋藤 綾
2005年、野原ホールディングス(当時は野原産業株式会社)に入社。総務部に配属後、与信審査、法務にも長く携わる。結婚し、3年の育児休暇を取得後、2017年5月に復職。復職と同時に、野原グループの広報担当となり、時短勤務、在宅勤務などの諸制度を活用しながら現在に至る。2022年、PRSJ認定PRプランナー資格を取得。

新規事業で先に進むため、今こそ広報が必要だった

──はじめに、広報チームの立ち上げに至った経緯を教えてください。
 
野原ホールディングス株式会社 マーケティング部 齋藤綾さん(以下、齋藤):きっかけは、弊社現社長の課題感でした。社長就任前から「当社はPR分野がまだ弱い」「企業成長のためにはもっとメディアを活用しなければ」という思いを抱いており、それが就任をきっかけに実ったかたちです。
 
実は2007年〜2010年頃にも一度、上場検討にともなう広報部立ち上げの動きがありました。私は、このとき上司の勧めでPR研修を受けたのですが、上場そのものが取りやめになったことで、広報部の話も消えてしまって。
 
その後、現社長の就任が視野に入ってきた2016年頃、広報部立ち上げへの再チャレンジが始まりました。「新しいことに挑戦して、自社も業界も変えていく」という経営ビジョンの実現には、新規事業に取り組むだけでなく、それを通じて自社や業界のイメージを刷新することが求められます。そのためには、やはり広報・PRに専念する部署が必要だという結論になったのです。
 
そこで、当時ちょうど第二子の育休から復帰したばかりだった私が、専任の広報担当者に指名されました。それまでの総務・法務の仕事で培った会社全体についての素養と、社内外での関係構築スキルが評価されたようです。このときから現在に至るまで、専任広報は私一人だけという体制でPR分野を担当しています。
 
──たった一人での広報チーム立ち上げに際して、苦労されたことはありませんでしたか?
 
齋藤:やはり最初の環境づくりは大変でしたね。まず準備すべきなのか、何をどうやって発信していけば良いのかなど、考えなければいけないことが多くて。
 
そんな立ち上げ初期に、Story Design houseさんに道案内をお願いしたことは正解でした。広報のプロからコミュニケーションの基本をインプットしていただき、メディアとつながるためのレールを敷いていただけたことはもちろん、社外の目線で客観的に見た「野原グループの売り」を教えていただけたことも大きかったですね。今も、このとき築いた環境を存分に活用してPRを展開しています。

メディアとの関係が、社内外のコミュニケーションを改善する

──広報活動の開始後、PRの内容はどのように変化しましたか?
 
齋藤:以前は役員人事などコーポレート分野のリリースを出す程度で、建設専門媒体記者とのリレーションもほとんどありませんでした。社長個人とのつながりで取材はありましたが、それもごくまれなことでした。
 
しかし今は、さまざまなメディアと関係を築いて、多彩な発信に挑戦できています。というのも、SDhさんの力を借りてドアをノックしてみれば、当社のことを知っているメディア関係者が実はたくさんいらっしゃったんです。
 
「社内の取り組みを時流と組み合わせてみましょう」という森さんのアドバイスを受け、発信の切り口にも工夫し始めました。寄稿や連載、企画の持ち込みでは、媒体の特性に合わせて発信内容に変化を付けるテクニックが役立ちました。アプローチ次第で、メディアコミュニケーションがこんなにも深まるとは驚きでしたね。
 
SDhさんにご協力いただいて開催したBIM発表会も、当社として新しい取り組みでした。この発表会の経験は、その後の社長就任記者発表でもしっかり活きました。発信のノウハウが蓄積されているのを感じて嬉しいです。
 
──さまざまな発信方法に取り組んでみて、PRの効果を感じておられますか?
 
齋藤:メディア掲載数が増えたほか、コーポレートサイトに掲載したニュースリリースのPV・セッション数・滞在時間も伸びています。数値で効果が現れると、地道にやってきた意味を感じますね。最近は、一般・ビジネス系メディアからの取材依頼も少しずつ増えています。
 
また、当社の取り組みや社風が多様なメディアを通して広まることで、採用にも効果が現れています。メディアへの掲載は社内にも良い影響を与えるようで、記事を読んだ社員が自社への理解を深めている様子を見聞きすることも多いですね。
 
同時に、発信に対する社内の協力体制も整ってきました。グループ内の広報専任担当者が私一人しかいないということで、人手不足が大きな課題だったのですが、最近では経営層や各社の事業部からの情報提供も盛んになってきました。社内の各所から良質な情報が集まってきて、それを外部に発信することで、社内外のコミュニケーションがさらに円滑になる。そんな好循環が生まれています。

ストーリーデザインハウス 森

成功のカギは、各事業部が自ら発信できる仕組みづくり

──社内の協力体制は、具体的にはどのように整えてこられたのでしょうか。

 齋藤:まずは、グループ内の各企業にいる広報兼任の担当者がリリースの執筆を担えるような体制を作りました。グループ全体で統一したメッセージを出すためにも、最初の2〜3回は私が書いて、そのあとは引き継いでもらう仕組みにしています。

 そして私からは、担当者一人ひとりの取り組みとその結果をしっかり経営層に伝えるように心がけています。こうしたコミュニケーションの積み重ねで、グループ各社に協力の輪が広がっています。最近では、発信に向けたスケジュールも各担当者に任せられるようになってきました。

 経営層へのアプローチという点では、取締役会など各社のトップが揃うミーティングで出た情報をピックアップして、発信につなげることも少なくありません。こういった場での情報収集を可能にした、現社長の判断が効いています。

 全社的な話でいうと、メディア対応に関する社内研修も始めました。SDhさんの研修資料を活用して、私自身がメディア理解や話し方をレクチャーします。最初に敷いていただいたレールを途絶えさせないように、取り組みを続けています。

 ──齋藤さんオリジナルの施策といえば、「ファクトシート」の導入もすばらしいですよね。

齋藤:「ファクトシート」とは、自分たちが取り組んでいる事業の内容を言語化して整理できるフレームです。グループ各社での取材対応やリリースの発信をなんとか効率化できないか、と考えた結果生まれました。

リリース制作前に各担当へ依頼するファクトシート

 取材回数が増えるにしたがって、何度も尋ねられること、つまりメディアの方が知りたいことが何なのか、各社の広報担当者の中では理解が進んできました。しかし、いざ取材になると口頭では言葉を濁してしまい、伝えきれないこともあります。また、実際に取材を受けるのは広報担当者だけではありません。事業部内のすべての人が、自分たちのことを言葉にできる体制が必要でした。
 
そこで、必要なことをすべて言葉で明らかにするツールとして、ファクトシートを作り、各事業部に配布しました。広報担当者や事業担当者が各自でこのシートの内容を埋めて、発信に役立てています。
 
また、このシートは森さんからPRに関するアドバイスをもらうときにも役立っています。社外に協力を求める際には、取り組みの背景や発信材料を整理しておくことが重要なのだなと改めて実感しました。
 
──グループ内各社で発信体制が整うと、齋藤さん自身の業務も一歩先へと進みそうですね。
 
齋藤:特にリリースについてはかなりの部分を任せられるようになってきたので、私は「リリースにない情報」をいかに発信していくか、を追究したいと考えています。寄稿や連載をもっと積極的に企画して、メディアとの関係をいっそう深めていきたいですね。

社内/社外の視点を両方持って、コミュニケーションの可能性を拡げたい

──今後、野原グループとしてどのように広報・PRに取り組んでいきたいとお考えですか?
 
齋藤:森さんから「記事にしてもらうには、自社の強みを他社・業界動向の中に位置付けて話すことが大切」というアドバイスをいただいたことがありますが、まさにそれを実践するために、社内外両方の目線を大事にしたいと思っています。特に、社会とのつながり(自社事業でどんな社会課題を解決できるか)を意識しています。
 
社内で取り組みたいのは、「自分の言葉で、自分たちのことを表現できる体制づくり」です。最近は、PR活動を身近なものに感じてもらいたくて、社員が取材を受けている風景を撮影して社内SNSに掲載する取り組みもはじめました。これを見て「自分も取材を受けてみたいな」と思う社員が増え、さらにコミュニケーションが活発になると嬉しいです。
 
同時に、SDhさんのような社外パートナーとも良好な関係を維持していきたいですね。新たなPRの取り組みに挑むときに「広報のプロのお墨付き」があるだけで社内の理解が得やすいのはもちろんですが、何より、自分ではキャッチしきれないトレンドや他社事情の理解に外部の目線が役立つと思っています。
 
このように複数の視点から自社と業界、社会の動向を捉えることで、ステークホルダーとのコミュニケーションの可能性を拡げたいですね。まずは、時流に応じた話題で社会との接点をつくり、その延長線上で当社の経営戦略や新規事業の取り組みを発信したい。そんな地道な種まきを続けて、「デジタルに強い建材商社」「建設産業をアップデートする野原グループ」のイメージが広く伝わっていけば幸いです。

SDhオフィスにて


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