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コロナ禍で躍進する企業のPR活用術ー信頼感を高めるストック型情報発信とは?

2020年以降、最も躍進した事業のひとつに動画配信サービスがあります。スポーツや音楽などのエンタテインメント業界だけでなく、企業のセミナーや展示会などのビジネスイベントも、多くがオンライン開催されるようになりました。

動画配信プラットフォームを世界展開するブライトコーブ株式会社では、動画の需要が急増したこの局面においても、積極的なPR活動やマーケティング活動を行ってきました。


今回の記事では、ブライトコーブのマーケティングマネジャー大野耕平さんに、BtoB企業が取り組むPRについて、Story Design houseの曽根圭輔と田邊都とともにお話しいただきました。

コロナ禍におけるマーケティング戦略は、どのようなものだったのでしょうか。また今後やってくるアフターコロナ時代において、どのような展開を考えられているのでしょうか。

ニーズが高いが、日本での知名度がないサービスをいかにPRするか?

曽根:ブライトコーブは、企業向けの動画配信プラットフォームを提供されています。コロナ禍で世界的に「動画」のニーズが高まり、動画を活用したコミュニケーションについて真剣に取り組む企業も大きく増えたのではないでしょうか。

我々Story Design houseがPRパートナーとしてコミュニケーション戦略のお手伝いをさせていただいたのは、ちょうど2020年初め頃からでした。

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大野さん(以下敬称略):実は以前にも短期間、別のPR会社に広報をお願いしていたことがあったのですが、成果は思わしくありませんでした。それで会社的に、もうPRを外注するのはやめようという話になっていた。そのタイミングで私がマーケティングに関わることになったのです。

以前のPR会社との契約を解消する前に、彼等としていた仕事の内容を確認をしたのです。するとブライトコーブが扱っている商材と、そのPR会社の得意分野とのミスマッチがあることに気が付きました。

そこで私はいちからPRパートナーになる企業を探すことにしました。お付き合いのある信頼できる会社の方々にヒアリングしたのです。そこで名前があがったのがStory Design house(以下、SDh)でした。

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決め手は担当者に対する信頼感です。大手の代理店などは、短いときはわずか半年ほどで担当者が変わり、そのたびに事業について説明しなおすようなこともあるんですよね。その点SDhとはブライトコーブを担当するチームを作って頂き、アットホームな関係性で、息の長いお付き合いが出来るのが魅力だと考えました。私自身も新たにPRに携わるタイミングでしたので、一緒に考えながらブライトコーブならではのPR戦略を練ってくれる伴走者を求めていたのです。

曽根:ありがとうございます。大野さんとは密にコミュニケーションをとりながらお仕事でき、それが結果にもつながっていると感じます。
大野さんはもともと営業職として長く活躍されていて、BtoB企業のマーケティングを担当されるようになったのは比較的最近のことだとお聞きしました。そんな大野さんは、広報やPRをどのように捉えているのでしょうか?

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大野:たぶん広報やPRって、特に多くのBtoB企業にとって、優先度の低いものと捉えられているように思います。広報活動を通していろんなメディアに取り上げてもらったとしても、ダイレクト営業に比べて売り上げへの貢献が見えにくい。だから専任者もおらず、どうしても後回しになってしまう分野だとは思います。

私自身はBtoBでもPRは必要だと思っています。然るべきメディアに社名やサービス名が載った記事が出ていることには、カスタマージャーニーの観点からも価値があります。ブライトコーブの場合、サービスの導入をしていただくクライアントはテレビ局や新聞社であったり、資生堂様やソフトバンク様など大企業も多い。そんな場合、実績だけではなく、こちら側の知名度も必要だと思うのです。業界で有名だということは安心感にもつながりますから。

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特に2020年以前の状況ですと、企業の担当者に動画配信に対するナレッジが少ない状況で、いくらブライトコーブの機能の良さや実績をご説明しても、スッと理解していただくのが難しかったという背景もあります。

曽根:そうですね。コロナ禍において初めてイベントなどのライブ配信にチャレンジされる企業も多い状況でした。我々も記者の方と話をする際には、まずライブ配信の基本知識からお伝えするなど、初歩的なことから丁寧にコミュニケーションをしていくことを心がけましたね。

高額な広告出稿以上に効果的な、ストック型広報戦略

田邊:SDhではメディアリレーションに限らず、企業コミュニケーションに関わる業務を全般的にご支援しています。ホワイトペーパーの制作や、FacebookやTwitterなどのSNSの運用、マーケティングイベントやメディアカンファレンス開催のサポートなど、お手伝いする範囲が広がっていきました。

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大野:広告出稿以外の全般をお願いしていますね。メディアに記事にしていただける回数も増えていると思います。「ブライトコーブがメディアで取り上げられましたよ」とか、「こんなアップデートがありましたよ」というようなことを、顧客向けのメールマガジンやSNSでお知らせしているのですが、最近はメディアに取り上げられることが多いので、ネタに困らなくなりました。

田邊:直近では、ブライトコーブ本社で撮影された「Shoot To Impress」という動画シリーズの内容をもとにして、ブログ記事「映える動画の撮り方」の記事執筆やバナー制作を行っています。このシリーズは自社サービスの宣伝ではなく、広く一般の方にも役に立つコンテンツですね。こういったコンテンツをもとに企業のブログやnote、SNS発信を積み重ねていくことで強みを発揮しますよね。

大野:そうなんですよ。大きなメディアに広告出稿をすると、一時的にはアテンションが取れて、資料請求も増えるのですが、地道なオーガニックコンテンツの方がストック型コンテンツとして効果的だったりもする。

もちろん私はタイアップ記事の出稿やコンテンツシンジケーションをやっています。でもそれだけを繰り返すのは、長い目線で見ていくと、あまり健康的ではないという気がしますね。予算さえあれば、記事を書いてもらうとか、大きくロゴや商品を載せてもらうってことは比較的簡単なんですが……。

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曽根:広告タイアップは否定しませんし、我々もおすすめすることがあります。アクセス数は当然上がりますし、一定のコンバージョンも担保されていて、効果的にリードを獲得できるひとつの手段です。一方でブログやnoteなどは、最初の反応ーーいわゆる初速はなかなか出ません。正直「これだけ手間をかけて書いたのに、見られていないな」という気持ちにもなります。

大野:そうなんですよね。ただ、ブログなどは常にCall To Action(行動喚起)を意識していて、ブログ経由でホワイトペーパーのダウンロードなどをしてもらうために、Facebook広告やGoogle広告、メール配信などを組み合わせることでリードを獲得しています。ブログってほとんどお金がかかってないんです。

BtoBマーケティングでは結局、リードや案件を1つ獲得するためにいくらコストがかかるのかという話になってくるのですが、そう考えるとタイアップ記事よりもブログのようなオーガニック検索を促すコンテンツの方が費用対効果が高いというケースは多いです。

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曽根:出稿して瞬間的に認知を上げることも大切です。ただ、受け皿がきちんとしてなければせっかくの打ち上げ花火も効果を発揮できません。見込み顧客がサービス導入を検討するタイミングで検索したときに、オンライン上に情報がストックされていなければ、せっかくのアテンションも流れてしまいます

田邊:同様の観点から、ウェブサイトの改定もSDhでお手伝いしました。アメリカに本社のあるブライトコーブのウェブページは元々直訳的な表現が多かったのですが、ブランドロゴなどを一新されたタイミングで、翻訳をやりなおしたのです。本国のレギュレーションを崩すことなく、日本のメディアや企業担当者の方が興味を持つ文脈を意識してローカライズしました。

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大野:ウェブサイトはストックしていくウェブ情報のなかでも、最もその企業を体現するものです。メッセージを統一できるので、ウェブサイトも含めた発信を一貫して任せていただけたことの意義は大きいですね。

ブライトコーブの世界戦略にも影響を与えたメディアカンファレンスの実施

曽根:2021年のチャレンジで印象的だったのは、メディアカンファレンスの実施です。以前からご提案していたのですが、ちょうどリブランディングのタイミングでもありましたし、「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」が初となるオンライン開催となる中で、公式動画配信パートナーシップの締結が決まったタイミングでしたので、今年3月16日に満を持して実施しました。

大野:アメリカ本国の組織を巻き込んだ大きなイベントになりましたね。実際にメディアも15社ほど来ていましたし、記事掲載にも繋がりました。本国の社長にも登壇してもらい、非常に効果的な試みだということで満足していました。

ブライトコーブはアメリカ、ヨーロッパだけでなくアジア、オセアニアと世界中に支社があるのですが、他の国の広報活動でも真似すべきだと、本社でも評判になっています。国によってはメディア掲載のためのコネクションをつくるために個別に多大な工数をかけていますし、費用対効果が明確でないことも多い。今回のように多くのメディアに一気にアピールできるカンファレンスは、非常に効率が良いのです。

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曽根:参加したメディアからの評判もよかったです。外資系企業のCEOに直接インタビューできる機会はなかなかありません。また、SXSW が開催されたタイミングに合わせたことで、より多くのメディアに興味を持ってもらいました。これまで繋がりのあったマーケ系メディアや業界専門メディアでの記事化いただけただけでなく、これまで繋がりのなかった多くのビジネスメディアや、海外にいる特派員の方にも参加頂くことができ、これまで以上に関係性の構築につなげられたイベントとなりました。

今回のメディアカンファレンスのときも感じましたが、ブライトコーブは提案してから実施するまでのスピード感がとても速いですね。良いものはすぐにやろうとなりますし、意思決定してからの決断が極めて早い。良い循環があるので、こちらも積極的に提案したくなりますね。

オンライン配信時代の主要サービスとしてPRを展開

田邊:これからもオンライン配信は生活の基盤になっていくと思いますが、今後のブライトコーブのPR戦略についてもお話ししたいです。

曽根:動画配信のビジネス活用というのは、まだまだ新しい分野ですよね。社内研修やエンゲージメント向上といったインターナル・コミュニケーションでの動画活用や、スポーツ中継や音楽ライブなどの動画コンテンツを配信するOTTサービスの広がりなど、一般化していないトピックがいくつもあります。

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OTTというのは、インターネットを介してマルチメディアコンテンツを提供するサービスの総称ですが、この概念の定義がまだ定まってないところもあって、わかりやすく伝えるのはなかなか難しい。しかし人々の生活において、このOTTサービスの重要性が増していくことは確かなわけです。我々としては、こういう時期は逆にチャンスだと捉えています。意味が定まっていないからこそ、この言葉をブライトコーブが定義付けをしていける。そのためのPR戦略を、ご提案していきたいと思っています。

大野:私が意識しているのはきめ細やかさですね。実は「動画=ブライトコーブ」としたい訳ではないのです。「動画」という言葉の純粋想起を狙っていくのではなく、「ビジネスに動画を活用したい」と企業担当者が考えたときに名前が挙がるようにしたい。
ニッチなところにも行き届くPR戦略で、どのように検索してもブライトコーブが出てくる世界観っていうのを目指していきたいですね。

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(取材・文:蜂谷智子 写真:Kohichi Ogasahara)

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