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「スナック」で恋活からキャリアデザインまで──多彩なイベントで「ママ」が活躍(後編)

企業がビジネスを進めていく上で根幹となる「コミュニケーション」。働き方が多様化し、コロナ禍でリモートワークの導入も進むなか、コミュニケーションに課題を感じる場面も増えているかもしれません。

──そんな組織の課題を解決に導くヒントとして、近年「スナック」に注目が集まっています。レトロでリラックスした空気感や、ママとのカウンター越しのやり取り。スナックならではの環境が、ビジネスシーンで役立つかもしれない……。

実は私たちStory Design house(以下、SDh)でも、「自社でスナックをやってみたい」という議論が出てきています。では、実際どんな事例があるのでしょうか? そこで本記事の前編では、スナックの運営を通じて社内コミュニケーションの改善を狙った4社の事例を取り上げました。

後編となる今回は、恋活やキャリアデザイン、トークイベント、コワーキングスペースなど、多彩な目的・シーンに「スナック」を応用した4社の取り組みを紹介します。

連載:ゆるい課題ラボ
会社組織には短中期的にやらなければならないことがたくさんある一方で、いますぐ着手しなければならないわけではないけれども、長期的な視点で検討したり、知見やネットワークを蓄積したりと、ゆっくり確実に取り組んでおきたい「ゆるい」課題があります。本連載では、SDhの社内でときどき話題になる課題やトピックを編集部がリサーチし、その成果を記事として社内外を問わず共有します。

さまざまなシーンに「スナック」を応用する

① 上市町恋活支援事業「人生相談会 in スナックもぐら」

富山県東部に位置する上市町では、人口減少や少子化への対策として恋活支援事業に取り組んでいます。その一環として開催されたのが「人生相談会 in スナックもぐら」。会場となった「コーヒー&スナックもぐら」は、上市町で40年以上にわたって愛され続けるお店です。

(20~30代限定)人生相談会inスナックもぐら ~そのもやもや、ママに相談してみない?~(1/14開催)参加者大募集中!!

そんな「もぐら」に20〜30代の男女が集まり、恋愛や仕事などさまざまな悩みが寄せられました。カウンターに立って悩みを聞き、親身なアドバイスをするのは、「上市の母」として親しまれるママの細川和子さん。また、町結婚相談所の相談員である小峯豊子さん、林清代美さんもカウンターの内側に立ち、若い人々の悩みに寄り添いました。

上市町メディアの記事によると、普段から若いお客さんも多く訪れるという「もぐら」。細川さんは、そんなお客さんの「お姉さんになったりお母さんになったり」しながら、毎夜一人ひとりの悩みに寄り添い、共に答えを探しています。今回のイベントには町外から参加した人もいたとのことで、「もぐら」の魅力、ひいては上市町の魅力を、広く伝える機会にもなったのではないでしょうか。

② HIKIDASHI「スナックひきだし」

赤坂見附にある「スナックひきだし」は、キャリアデザイン支援を手掛ける株式会社HIKIDASHIが運営するスナックです。研修やセミナー、コーチングと並ぶ事業のひとつとして展開されるこのスナック。代表取締役・木下紫乃さんへのインタビューによると、「40代、50代のミドル世代にキャリアを考えるきっかけを提供したい」という想いからスタートした取り組みなのだそうです。

スナックひきだし | 株式会社HIKIDASHI

スナックを始める前に、ミドル世代を対象とした個人向けオープンセミナーを開催していた同社。しかし、思っていたほど参加者が集まらなかったといいます。その理由を求めてヒアリングを重ね、浮かび上がってきたのは「今後のキャリアに不安を抱いてはいるものの、セミナーで自分のことを話すのは敷居が高い」というミドル世代の感覚でした。では、どのような環境であれば、気軽に仕事や人生について話せるのか? そう考えた木下さんがたどり着いたのが「スナック」だったのです。

そこで、知人が営業する本当のスナックを借りて、ミドル世代がモヤモヤを語り合うイベント「スナックひきだし」を開催したところ、大盛況。ママ役の木下さんやほかのお客さんと気軽に会話しながら自分の視野を広げられる環境が人気を呼び、定期イベントへと発展します。木下さんの生活リズムに合わせて昼間にオープンすることから、同イベントは「昼スナ」という愛称で親しまれるようになりました。

やがて「昼スナ」のお客さんの中から「私もスナックのママをやってみたい」という声が上がり始めます。「場の主催者」になることの重要性をかねてから感じていた木下さんは、もっと多くの人が主催者になれるようにと、2020年、赤坂見附に自らの店舗「スナックひきだし」をオープン。現在では、多種多様なキャリアを歩んできたママやマスターたちが交代でお店を切り盛りし、より幅広い感性や価値観に出会える場として多くの人に愛されています。

③ 春日井製菓「スナックかすがい」

豆菓子やキャンディでおなじみの春日井製菓は、自社が開催するイベントに「スナック」の形式を持ち込みました。それが「スナックかすがい」です。

スナックかすがい | 春日井製菓

スナックかすがいは、異なる分野で活躍する2名のゲストを迎えて開催されるトークイベント。参加者は、同社のおつまみ「グリーン豆」と生ビールを片手に、ゲストたちのトークを楽しみます。「スナックかすがい」という名前は、社名の「春日井」と、「子はかすがい(鎹)」でおなじみの「鎹」をかけ合わせたもので、ママ役の春日井社員がゲストや参加者たちの「かすがい」となってイベントを盛り上げています。

スナックかすがいを立ち上げたマーケティング部長・原智彦さんへのインタビューによると、この取り組みは、同業他社に比べて会社や看板商品への関心度が低いという問題意識から始まったのだそうです。課題解決のためにまず取り組んだのが、「Kasugaiは、お菓子を通じて異なる価値を力強くつなぎ合わせ、新しい成果(製菓)を出し続ける会社」というコミュニケーションアイデアの考案。そして、このアイデアを実践する場として、人と人とが堅苦しさ抜きにつながれる「スナック」というかたちを選びました。

この取り組みは、リアルでもオンラインでも人気を博し、1月31日の回で開催26回目を迎えています。さまざまな業界からゲストを呼ぶことが、春日井製菓のお菓子や取り組みを幅広く広めることにつながっているとのこと。そして、イベント中に春日井製菓の商品PRは一切行われないにも関わらず、参加者のブランド好意度が上がったそうです。スナックの形式を利用した新しい顧客コミュニケーションとして、注目したい事例です。

④ コワーキングスナック「Contentz」

最後に取り上げるのは、コワーキングスナック「Contentz」。その名のとおり「コワーキングスペース」と「スナック」をかけ合わせた、お酒片手に仕事ができる空間です。

コワーキングスナックContentz | 五反田のネオスナック

このスナックを立ち上げたのは、編集プロダクションの有限会社ノオト。同社が手掛けるコワーキングスペースの「分室」として、2016年にグランドオープンしました。現在は合同会社佐藤商店が運営を担っています。

通常のスナックのように幅広いお酒を取り揃えつつ、Wi-Fi・電源といったデスクワーク用の設備も完備。取材記事によるとこのコワーキングスナックは、しゃべったり、ワイワイ騒いだりしながら仕事ができる環境を求めて作られたのだそうです。カウンターで談笑しながら仕事ができるのはもちろん、集中したいときはテーブル席で、店内の心地よいざわめきをBGMに作業を進めることも可能です。チャージを「ドロップイン」と呼ぶなど、コワーキングに擬えた料金システムもユニークです。

仕事をしながら、楽しく気軽に人とのつながりを増やしていけるコワーキングスナック。フリーランスが多い領域で事業を展開する編集プロダクションならではの発想とも言えそうです。

いかに「日常」から離れるか

以上、さまざまなシーンに「スナック」を応用した4社の事例を紹介してきました。そこに共通しているのは、普段の日常から離れるためにスナックの雰囲気を活用しているということです。

いつもの雰囲気から離れることで、テンションを高める、気分を変える。これまで考えてこなかったことを言葉にする。リモートワークの普及と並行するように、普段とは異なるリアリティを感じられる場に対する需要も高まっているのではないでしょうか。

──ほかのケースも知りたい方は、本記事の前編もお読みください。これらを参考にしつつ、自分たちらしい「スナック」のあり方をSDhでも考えていきたいと思います。

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