トークン経済圏は本当に生まれるか? 国内外のビジネス活用事例から考える(canow株式会社・大坂亮平さん)
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トークン経済圏は本当に生まれるか? 国内外のビジネス活用事例から考える(canow株式会社・大坂亮平さん)

Story Design house

「ブロックチェーンが世界を変える」というビジョンが叫ばれ、仮想通貨やトークンに関するサービスが次々と生み出されている時代。しかし、実際のところ企業や消費者はそれらをどのように活用していくのだろうか?

今回の記事は、私たちStory Design houseがコミュニケーション戦略の支援を行うcanow株式会社のCOO 大坂亮平さんに、そんな素朴な疑問を投げかけた。2019年にアメリカからヨーロッパ、アジアまで海外のブロックチェーン・カンファレンスを1年かけてめぐった経験をもとに、「トークンのビジネス活用」の最新事情を語ってくれた。

大坂亮平さん / canow株式会社COO
1982年東京都生まれ。専門学校卒業後、音楽制作/作家事務所や、動画のスタートアップを経て、デジタルマーケティングに従事。勤務先のビル内に暗号資産の取引所も入居していたこともあり、ブロックチェーンや暗号資産の世界に興味を持ち、ブロックチェーン関連のメディアの立ち上げや海外カンファレンスのアレンジなどを行う事業会社へ入社。2020年4月にcanow株式会社を設立。

投機目的からビジネス活用へ

——初歩的なところから伺いたいと思います。canow社の事業のひとつが「トークンのビジネス活用」ですが、そもそも「トークン」とはどういうものなのでしょうか?

私たちが扱っているトークンとは、既存のブロックチェーン技術を利用して発行された通貨のことです。トークンを発行する目的は、企業が自分たちのコミュニティを盛り上げたり、資金調達に用いたりとさまざまです。昨年はイタリアのサッカーチーム・ユベントスFCがトークンを発行して話題を集めました。著名な企業が自社でトークンを発行する時代になりつつあると考えています。

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——仮想通貨やトークンに対しては、ビジネス活用というよりも投機的なイメージがまだ強い印象があります。2018年にあった国内の大手仮想通貨取引所の流出事件をはじめ、なんだかよくわからない、怪しいと感じている人が多いのではないでしょうか。

そうですね、残念ながらネガティブなイメージは根強くあると思います。ただ、事件を受けて日本の行政は金融庁を通じた規制やガイドラインの整備を急ピッチで進め、業界も自主規制団体を発足しました。

こうした動きが進んだ結果、この2年で詐欺まがいの会社はだいぶ淘汰されてきたと思います。また、DMM BitcoinやbitFlyerといった一般ユーザー向けのサービスも盛り上がっていて、状況はよくなってきていると思います。弊社でも、国内の大手企業や地方自治体の方から「トークンを事業に活用したい」といったお話を聞く機会が増えてきました。

仮想通貨やトークンの基盤となる「ブロックチェーン」についても、その技術や使い方に関する理解が進んできたと思います。ブロックチェーンは、すごく単純に言うと「データを分散化して記録する技術」です。データの改ざんが難しいという側面を活かして、通貨としても利用されていますが、使い方はそれだけではありません。

たとえば、自動車業界です。車の自動運転にもブロックチェーンの技術が検討や研究されるようになってきていますし、交通事故の調査に役立つのではないかという研究も進んでいます。ブロックチェーンを活かして、運転データを改ざん不可能なかたちで記録し、取得しようというわけです。

トヨタグループが昨年、「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」を発表しましたね。そこでは、ブロックチェーンによって中古車販売のトレーサビリティを高めたり、KYC(Know Your Customer)と呼ばれる本人確認の簡略化を行なったりできるといった実証実験の成果が示されていました。

各国のトークン事情

——日本の状況は、海外と比較するといかがですか?

私は昨年1年間かけて、世界中のブロックチェーン・カンファレンスや仮想通貨取引を行う企業、トークンを活用する会社をめぐりました。Delta summitD.FINEといったカンファレンスではスピーカーとしても登壇しました。

そこで感じたこととしては、そもそも日本人が本当に少ないということです。その結果として、海外のプレイヤーの情報がほとんど日本には入ってきておらず、業界のグローバルな進み方とはかなりズレがあると感じます。ガラパゴス化していると言ってもいいかもしれません。

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たとえば、変わってきてはいるものの、日本では仮想通貨やトークンに関する技術寄りの見方が強いですね。それに対して、海外では技術をどうやって普及させるかを訴える人が多い。この点には大きく影響を受けました。私が「トークンのビジネス活用」という言葉を使うのも、そのひとつです。

また、一口に海外と言っても、各大陸によって仮想通貨やトークン、ブロックチェーンに対する捉え方は大きく異なります

中国では、ブロックチェーン技術を発展させていくと言う考え方より、投機的な考え方が強い雰囲気がありました。その一方で、ヨーロッパでは投機的な話をする人は少なく、ブロックチェーン技術を活かしたサービスをきちんと作っていこうという人が多かったですね。アメリカに目を移すと、金融や株式の分野に対する関心が強いようでした。

面白かったのは、東南アジアです。中国とヨーロッパのいいところを足したような考え方をする方が多いと感じました。トークンを一部流通させたり海外資本の取引所を作ったりと、中国のような考え方がある一方で、いいサービスを提供しようとしている方も多い。業界の中では後発ですが、中国との関係値もありバランスよく進んでいるという印象でした。もしかしたら、トークンに関するサービスのブレイクスルーは東南アジアから起こるかもしれません。

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——各国の様子が伝わってくるようです。しかし、まだ企業や消費者が仮想通貨やトークンを活用しているイメージが湧きません。たとえば、日本ではキャッシュレス決済が急速に進んでいますが、決済の場面での利用は考えられますか?

オンラインでの決済活用はあり得ると思います。FortniteやMinecraftといったゲーム内の経済がトークンで動いていくようなビジョンですね。しかし、リアル空間でのトークン決済というのはほとんど例がないと思います。技術的に向いているとも思えないですし、正直、リアルでの決済にトークンは使わない方がいいと思っています。そこは法定通貨、もしくは現在検討されている法定通貨デジタルでよいのではないでしょうか。

ファントークンの可能性

——では、既に発行されているトークンについてはどうですか? 実際のところ、どういうふうに使われているのでしょうか。

最初に名前をあげた、イタリアのユベントスFCの例を紹介したいと思います。ユベントスFCが発行する「ユベントスファントークン($JUV)」は、クラブの運営方針を決める投票権として機能しています。たとえば、トークンを持っている人は、試合中の得点後に流れる音楽や、ユニフォームの新しいデザインを選ぶ投票に参加できます。今後は、法定通貨の代わりにチケットや物販で利用できるようになる可能性もありそうです。

私自身、サッカー観戦が趣味なのですが、そもそもプロスポーツの根幹は、ファンとのコミュニケーションですよね。ユベントスFCは、ファントークンの発行を通じて、コミュニケーションツールを新しく作ったわけです。

——クラウドファンディングやファンクラブ特典の延長のようなものでしょうか。

トークンは基本的には通貨ですから、単純にこれまでのファンビジネスと違うところもありますよ。ユベントスのトークンの場合、「チリーズ」というスポーツビジネス系に特化した取引所で売り買いすることができます。そこでは、株式や法定通貨と同じように取引によって値動きがあるのですが、「C・ロナウドが地元から帰ってきた」というニュースだけで、一時は20%弱ほど価値が上昇したという話があります。

——それは面白いですね!

面白いですよね。もちろん、選手の人気度合いはスタジアムへの集客人数やグッズの販売額というかたちで、ずっとチームのビジネスと関係していたと思います。しかし、今後はトークンの価値にも影響するかもしれません。たとえば、「SNSでのフォロワー数が多く、いつでもポジティブな話題を提供できる選手」がチームに入ってきたら、オフシーズンであってもトークンの価値が高まるかもしれない。こうなると、選手の評価に新しい基準が生まれていく可能性すら考えられます。

——他にはどんな企業でトークンが使われているのでしょうか。

先ほど話題にした「チリーズ」では、ユベントス以外にもスペインのバルセロナFCが「バルサ・ファン・トークン($BAR)」を発行していますし、アメリカの総合格闘技団体UFCも参加しています。今後はeスポーツ関連のトークンも扱うようです。

今年5月にオープンした渋谷区公認のVR空間「バーチャル渋谷」のようなコミュニティでも、トークンが使用されれば面白いのではないかと思います。ゲームやVRといったカルチャーとトークンの相性は非常にいいでしょうね。

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「個にフォーカスする社会」をつくる

——canow社では、トークンをどのように活用しているのでしょうか。

弊社では海外で雇用しているコミュニティマネージャーの報酬を、以前からトークンで支払っています。少し前まではUSDTというアメリカドルと連動するトークンで支払っていたのですが、最近は自社発行のトークンに切り替えました。30名ほどいるマネージャーのうち、8割ほどが弊社のトークンで報酬を受け取りたいと言ってくれました。

これがなにを意味するかというと、自社トークンでの受取に応じてくれた人たちは、弊社の将来性に期待してくれたということです。もともと使っていたUSDTは、ドルと連携しているため、価値が大きく変動することはありません。法定通貨での支払いと似ています。そんなドルで受け取るより、弊社のトークンのほうが今後価値が上がっていくだろうと判断してくれたというわけです。

ストックオプションの付与と似た印象を持たれるかもしれませんが、ストックオプションの行使には相応の時間が掛かるのに対して、トークンならばいつでも使えるというメリットがありますね。

——企業がトークンを発行すると、株式とはまた違った軸で、その企業に対する期待感や信用度を可視化できるというわけですね。ファンの多い企業のトークンは価値が上がりますし、そこで働きたいと思う人も増えそうです。

ええ。雇用の流動性という観点でも、変化のきっかけになりうると思います。最近では副業が一般的になったり、リモートワークが普及したり、あるいはベーシックインカムのアイディアが議論されたりしていますよね。

個人がいろいろな会社と一緒に働き、各社の発行するトークンで報酬を受け取るようになれば、個々人がどの会社、どのトークンに期待を賭けるかが重要視されるようになるでしょう。大きく言えば、トークンは「個にフォーカスする社会」を生み出すきっかけになるのです。

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——大坂さんが「トークンのビジネス活用」にこだわる理由がわかってきました。トークンの普及を通じて、「個にフォーカスする社会」をつくりたいのですね。

まさにそうです。個人のユーザーが気軽に自分の支持する企業やコミュニティにコミットできるよう、トークンの利用が当たり前だという社会にしたいと考えています。また企業から見ればロイヤリティの可視化とも言えるかもしれませんね。

弊社でも、いろいろな会社と協業して、社会のなかにトークンの居場所を広げていこうとしています。一例としては、とある小売企業が運営しているポイントカードのシステムを、トークンに移行しようという仕事が動いています。ポイントに親しんできた既存のユーザーとの関わりを強化できるとともに、これまで接点を持てていなかった海外ユーザーの獲得にもつながる、面白いマーケティング施策になると考えています。トークンであれば、海外からでも手に入れることができますから。

こうしたケースを積み重ねていくことで、ビジネスとしてのトークンを健全に成立させるモデルをつくりたいと考えています。そのモデルが社会のなかにいくつも生まれ、個人にきちんとフォーカスがあたる「トークン経済圏」が広がっていくのを楽しみに思っています。

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