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「数を追うだけ」のPRに意味はない。本質的な課題解決に貢献する戦略の作り方とは

SNSで話題を席巻している東京・秋葉原の飲食店『肉屋横丁』をご存知だろうか。「A5ランクの和牛食べ放題」を4900〜5900円という驚きの価格帯で提供しているこのブランドは、老舗焼肉グループ平城苑が秋葉原で運営していた店舗をリニューアルする形で、2020年12月に誕生した。

かつては同じ場所でラグジュアリー層向けの焼肉店を営んでいた平城苑。コロナ禍を受け、新たな呼び水となるコンテンツを必要としていた。そこで生まれたのが、『肉屋横丁』だ。ターゲットを大衆へと大胆に変更。和牛食べ放題に加え、ショーウィンドウに好きなお肉を取りに行くという、コロナ対策を兼ねた「精肉対面販売店」という新しいスタイルの店舗に生まれ変わった。

クライアント本来の強みを伝えるストーリーを発掘

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Story Design houseは2020年10月頃、平城苑から『肉屋横丁』のPRについてご相談をいただいた。担当した村上大和は、当時の心中を次のように語る。

「『和牛食べ放題』がインパクトのある企画だったので、メディアには十分注目してもらえると思いました。ただ、『和牛食べ放題』だけにスポットが当たってしまうのは避けたかった。これを機に平城苑の展開する『肉屋横丁』以外の店舗にも関心を持ってもらうには、平城苑ブランドの強みやストーリーをしっかりとメディアに伝える必要があると考えました」

そのためには、メディア向け記者発表会のプレゼン内容が重要だと考え、広報担当者にとどまらず、商品開発担当者にもヒアリングを行った。コミュニケーションを深めていった結果、ある事実にたどり着く。

「平城苑はこれまでの歴史の中で、仕入れの量も価格も一切変更してこなかったことがわかったんです。コロナ禍においても一定の仕入れを保ってきたのは、すごいことだと思いました。そこで、『お客様と生産者に支えられて50周年を迎えた平城苑が、コロナ禍による需要減で苦しむ生産者支援を兼ねて、食べ放題に踏み切った』というストーリーを軸に、プレゼンを設計しました」

記者発表会では、平城苑が『肉屋横丁』にかける思いを、生産者支援の文脈とともに丁寧に伝えた。その結果、多くのメディアが「コロナ禍でも仕入れを止めなかったからこそ、他社ではできない食べ放題ができる」といった背景にあるストーリーも含めて紹介してくれたのだ。

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徹底したリサーチが可能にする、プラスαの広がり

ブランドのストーリーやメッセージ、それらを支える重要なファクトは、クライアントと密にコミュニケーションをとる中で見つかることもある。今回は「和牛食べ放題の店舗がオープンする」という新トピックスについて、クライアントの広報担当者から得られる情報だけでなく、その先にいるクライアント社内の関係者まで積極的に情報を取りに行った。そのアクションが幸いし、単なる食べ放題の感想だけでなく、平城苑のフィロソフィーや経営戦略を盛り込んだ形で情報を発信することに成功したのだ。

さら、アプローチするメディアにも一工夫を加えた。『肉屋横丁』の主たるターゲットは会社員の男性だが、アプローチ先に女性誌やライフスタイル系メディアも追加。ターゲットメディアを広げる判断をしたのには理由があった。

「内装がすごく絵映えするんです。飲み放題も工夫されていて、何種類ものシロップでいろんなカクテルを作れる。これは、年齢や性別を問わず興味を持ってもらえそうだと思いました。平城苑はこれまでラグジュアリーな店舗を展開してきたので、今回のPR施策をきっかけに、これまでアプローチできていなかったようなお客様にも平城苑を知ってもらいたかったんです

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オープン直後には、お客様の反応もつぶさにチェックしていた。初日に来店したお客様のTwitter投稿が一気に拡散し、週末の三連休が大盛況になった様子をリリースで配信。素早い情報拡散によってメディアが興味を持ち、オープン2週間後に開催したメディア向け記者発表会は大盛況となった。コロナ禍で飲食業界全体が苦しむ中、『肉屋横丁』は今も、会社員から若い女性まで幅広いお客様で賑わっている。

ご当地商品の認知を取るだけでは、地方の課題解決につながらない

新しいコンテンツを拡散するだけでなく、どんなメッセージを発信し、どんな目的を達成するのかを大切にする姿勢は、地方のプロジェクトでも貫かれている。

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最近手がけたのは、会津美里町のご当地商品、『ピンピンころりカレー』のPRだ。商品の特徴は、国内の高麗人参の産地は3つしかない中、地元産の高麗人参をふんだんに使っていること。

高麗人参は育てるのに5~6年はかかる上、一度作ったらその土地を1年間休ませなければならない。生産が大変なため、担い手は高齢化の一途。そんな中、会津美里町の伝統食材を復活させたいという思いから生まれた『ピンピンころりカレー』のPRを、村上が担当した。

『ピンピンころりカレー』の記者発表会には、会津美里町の町長にも協力してもらった。

「カレーだけに注目が集まってしまったら、このプロジェクトの本来の目的が達成できないと思ったんです。そもそも会津美里町では、このカレーを町に興味を持ってもらうきっかけにしようと開発しました。中長期的には観光客を増やしたり、地域の振興につなげたいという想いがあります。それならば、高麗人参を育てている背景や、美里町というまち自体も知ってもらわなければ意味がありません。町の全体感をメディアに伝えるためには、町長にもご参加いただき、そうい想いを語っていただくのが必要だと考えました」

この記者発表会をきっかけに、産経新聞では「伝統野菜の復活」という切り口で特集された。その記事では、『ピンピンコロリカレー』だけでなく、高麗人参の生産に関わる人たちなどの関係者の声も取り上げられた。

まちおこしPRで大切なのは、地域の声と課題に徹底的に向き合うことだという。

「カレーをきっかけに、地域復興の文脈で会津美里町を紹介いただけたのは、非常に嬉しかったです。

地域の取り組みってメディアに取り上げられやすくはあるのですが、単に商品の認知を取るだけでは意味がありません。自分が大事にしているのは、当事者の声をちゃんと拾い、伝えること。生産者、開発する業者、住民といった、地域で頑張っている人たちの声を発信することで、本質的な課題解決につなげられると考えています」

村上大和/Media Planner、PR Consultant
前職はリクルートキャリアで企業の求職活動を支えるプランナーを担当。求人という手法にとらわれずに企業目線で世の中にメッセージを伝える仕事がしたいという思いから、2019年1月Story Design houseに入社。求人原稿の執筆経験を活かした、ターゲットを意識したメッセージ形成が得意。仕事で大切にしているのは「表面的な仕事で満足しないこと」。単に数を追うのではなく、クライアントの目的を達成するPRにこだわっている。

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Story Design houseでは現在、PR戦略コンサルタント、および、メディアプランナーとして活躍できる人材を募集しております。以下バナーより採用ページをぜひご覧ください

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