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イノベーションが起きるのは東京だけじゃない。これからの地方とスタートアップの関係。

去る6月19日、世界11拠点でイノベーションを推進するコミュニティ Venture Café Tokyo(以下、ベンチャーカフェ)が、茨城県つくば市および名古屋市と連携することを発表しました。

今後はベンチャーカフェが東京・虎ノ門で取り組むものに近い交流プログラムを、茨城県つくば市と名古屋市で取り組んでいきます。これまで日本においては東京を拠点としてきたベンチャーカフェとしての、初の地方展開になります。

Story Design houseでは、このプロジェクトのPRをお手伝いさせていただきました。

人と人とのつながりからイノベーションが生まれる

ベンチャーカフェは、起業家、起業志望者、大企業の新規事業担当者、学生、投資家、官公庁関係者等、さまざまなイノベーターが集まるコミュニティです。2009年にアメリカのボストンで設立され、世界6ヶ国12都市にて展開(2019年8月時点)しています。東京・虎ノ門ヒルズに拠点ができたのは2018年3月のことです。

「カフェ」という名前からはリアルな場所を連想しますが、お店があるわけではありません。虎ノ門ヒルズを会場に、毎週開催されていた「Thursday Gathering」というイベントは「木曜日に集まろう」というシンプルなコンセプトのもと、多種多様な人たちが集まり議論や交流が生まれていました。

ベンチャーカフェが掲げるミッションは”Connecting innovators to make things happen”。広く門戸が開かれたコミュニティを通じて多様な人を巻き込み、相互に学びあうコミュニティ形成を通して、社会変革の波を起こすこと。そして社会変革に向けた挑戦を支援し、所属コミュニティの外に飛び出し、挑戦する人のセーフティネットになることを目指しています。

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コロナ禍以前のベンチャーカフェの様子。多種多様な人たちが集まる

コロナ禍以降はオンライン配信での開催となっていますが、Zoomを通して毎週たくさんの人たちが交流しています。私たちStory Design houseのメンバーも、6月11日にオンライン登壇させていただきました。

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SDhメンバーが登壇したときの様子

ベンチャーカフェの運営責任者である山川恭弘さんと私たちの出会いの場も、オープンから間もない頃のThursday Gathering でした。

山川さんは、全米大学評価にて起業家教育部門1位を20年以上取り続けているバブソン大学で教鞭をとっています。「起業学」や「失敗学」を教え、ご自身も複数のビジネスに経営者や投資家として関わっています。日本にも起業家的思考を持つ人を増やしていきたいという思いが、ベンチャーカフェの運営につながっているようです。

ウィズコロナだからこそ大切な「つながり」

新型コロナウイルス感染拡大により、対面での接触や移動が制限されるなか、テレワークの推進がなされ、ビデオ会議システムやチャットツールが大幅に浸透しました。テレワーク関連の調査では、多くの人がオフィスに出勤していたときと比較して、「生産性が上がった」もしくは「生産性は変わらない」と回答しています。

たしかに、慣れた業務を進めていく上ではテレワークはとても快適に感じますが、一方で、テレワークに移行してからは新しい出会いや発見、偶然の出会い、予想外の出来事はずいぶん減ってしまいました。新規事業やチームの立ち上げのような、なにか新しいことを始める上で、こうした偶然の要素はとても重要です。多様な人と「つながる」ことの意味はこうしたところにあるはず。その上で、ベンチャーカフェが掲げる”Connecting innovators to make things happen”の持つ価値は、ウィズコロナの時代にとても重要であると思います。

名古屋市とつくば市、それぞれの強みを活かしたエコシステム構築へ

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今回のベンチャーカフェと、つくば市、名古屋市による交流プログラムのスタートの背景にはなにがあるのでしょう。

茨城県つくば市は、国内最大のサイエンスシティです。つくば市といえば筑波大学を思い浮かべる人は多いと思いますが、それ以外にも産総研やJAXAなどの研究機関をはじめ、約300にも及ぶ民間の研究機関・企業等が立地しています。

一方で、名古屋市は東海エリアの経済の中心であり、トヨタ自動車を筆頭に日本を代表する企業が数多く集まる産業都市です。自動車産業はもちろん、ファインセラミックスや航空宇宙などハイテク産業の集積地で、名古屋大学や名古屋工業大学など理工系大学も多く、先端科学技術の研究施設も数多くあります。

どちらの都市も先端技術が集積し、多様な人材が集まり、事業創造に向けた取り組みも盛んに行われています。一方で、新しい事業や産業創出に向けた起業件数は横ばいで推移しているそうです。その要因として、大企業や研究機関、スタートアップが交流する機会や拠点が少ないことが挙げられます。特に大企業においては、それぞれが独立した企業コミュニティを形成し、なかなか外部との交流が深まっていかないのが現状です。

そうした状況を打開すべく、茨城県庁やつくば市、そして名古屋市がベンチャーカフェと対話を重ね、交流プログラムを実施していくことを決定しました。

優れたアイデアや技術を持っていたとしても、そこから事業を立ち上げるまでには後押ししてくれる人や環境の存在が必要です。起業を目指す人たちだけでなく、金融関係者や、意思ある人を応援したい投資家、研究者などが定期的に交流することで新しいイノベーションの芽が数多く生まれてくるはずです。

世界に目を向けると地域毎に特色のあるエコシステムが生まれており、たとえば中国では都市ごとに異なる特徴を持った産業が成長しています。

・北京:理工系の有力大学をいくつも擁し、人材が豊富
・杭州:アリババのお膝元として、eコマース関連のスタートアップが数多く集まる
・上海:eコマースやFintech、ライフスタイル関連の企業が数多く集まる
・深圳:スマートフォンや電子機器の産業が集積=モノづくりのエコシステムが構築

日本においては東京一極集中の結果、地域や都市ならではの産業やエコシステムが創られていないことが課題でした。今回のベンチャーカフェの取り組みには、地域に根差した次の世代の産業やエコシステムを創っていく意気込みを感じます。

ウィズコロナの地方とイノベーション

この数年、地方から発信されるイノベーションへの注目が高まっていました。コロナ禍は、それを後押しするきっかけになるかもしれません。人々の移動が控えられ、オンラインで人と会うことが当たり前になったことで、これまでは簡単には会えなかった人とも比較的気軽につながることができるからです。

新型コロナウイルスの影響がいつまでどのくらい続くのか、まだまだわからない状況です。こんなときだからこそ、ベンチャーカフェの山川さんがよく言っている言葉「Action trumps everything!(行動が全てに勝る)」が大切なのだと思います。とにかく、行動すること。各地で醸成されるつながりが、コロナ禍以降もさらに広がり、新たなイノベーションを後押しすることを期待したいと思います。

茨城県つくば市と名古屋市の交流プログラムの詳細について
 ・つくば市:8月7日に「TSUKUBA CONNÉCT」がスタート
http://venturecafetokyo.org/tsukuba-connect-virtual/
・名古屋市:7月31日に「NAGOYA CONNÉCT」がスタート
http://venturecafetokyo.org/nagoya-connect/
Story Design houseでは「意志あるところに道をつくる」をミッションとして、さまざまな企業のPR活動を支援しています。是非、ウェブサイトもご覧ください。
お問い合わせはこちらから。 https://www.sd-h.jp/contact

(文:Story Design house 鈴木亮一)

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